2017年の春、私は貧困に陥りました。障害年金が不支給になったのです。
2016年9月1日、精神障害者(と知的障害者)だけを標的とした障害年金制度の改定が行われました。「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」という名の「経済制裁」が密やかに発動されていたのです。
それ以降、私達は食事、洗面、洗髪や入浴、買い物等が一人でできるかどうかという簡単な基準、たったそれだけで、支給の可否、等級(支給額)が決定されるようになったのです。
一人暮らしは絶対に受給できない
こうした「日常生活」を他の人の支援や援助なしでできてしまうと、障害が非常に軽いと診断され、障害年金が不支給となってしまう。
しかし既に「一人暮らし」をしてきた精神障害者は、食事、洗面、入浴、買い物などの簡単な日常行動の大半を一人で行います。一人で暮らすためのスキル・経験が十分に備わっています。
身体障害が伴っている訳でもありません。症状が重くても身体の自由までは奪われません。
そもそも私達には同居の家族などが居ません。生活を支援・援助してくれる人が居ないのです。選択の余地はありません。自力で生活する以外には。
どんなに辛くても、生きるため日常行動を全部一人でせざるをないのです。
この巧妙なからくりにより、一人暮らしの精神障害者は、障害年金を事実上、受給することができなくなってしまったのです。
狡猾な社会保障費抑制策ですね。
一人暮らし経済危機
不支給による経済損失は最低でも、年間で約60万円〜72万円。月額ベースでは約5万円〜6万円。
- 月給が6万円も減額された場合を想像してみて下さい。
- 年収が72万円も下がった場合を想像して下さい。
誰が、今まで通りの生活を維持できるのでしょうか?
新型コロナウイルスによる「世紀の大不況」であっても、日本人の年収減は38万程度と言われています。
コロナでGDP年率27.8%減 平均給与38万円ダウンの懸念 | 女性自身
最近では一人暮らしという理由だけで、本来2級(かなり重い障害)に該当する人であっても、不支給になっているという話を聞きます。

出典:精神障害・知的障害の等級判定ガイドライン - 精神疾患専門 横浜障害年金申請相談室 画像の一部加工
その場合の経済損失は年間で約120万円〜144万円、月額で約10万円〜12万円になります。国は精神障害者を死滅させる気なんでしょうか?
だとしたら、制裁ではなくもう「迫害」です。
貧困の定義
貧困には2つのタイプがあります。
- 絶対的貧困
- 相対的貧困
一般的に貧困と言えば、絶対的貧困のことを指します。絶対的貧困とは、「生きるのが困難なレベルで生活水準が低いこと」を指します。
生命に関わる貧困とも言えるでしょう。食料、医療、衣類、住みかなどの調達が困難な状態。例えばサブサハラ、アフリカ地域での貧困や、難民の生活などがそれに当てはまるでしょう。
相対的貧困の定義
一方、相対的貧困は「国や社会、地域など一定の母数の大多数より貧しい状態」と定義されるようです。所得が、「その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯」とも定義されるようです。しかし、意味が分かりません。
相対的貧困線 | 中央値 | |
---|---|---|
1人世帯 | 1,240,000 | 2,480,000 |
2人世帯 | 1,750,000 | 3,500,000 |
3人世帯 | 2,150,000 | 4,300,000 |
4人世帯 | 2,480,000 | 4,960,000 |
※2019年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省を元に作成。
この定義によれば所得が「相対的貧困線」以下だと、相対的貧困になります。日本の一人暮らし世帯の場合、概ね手取りが124万円以下。月収だと手取り10万程度だと相対的貧困となります。
その手取り額からさらに家賃を払う。首都圏ならボロくても5.5万前後。そして水道光熱費も払う。手元には約2〜3万しか残らない。しかもそこから食費をまかなっていく。無理です。
飢えていない方々が考えた高尚な定義。実態と相当ずれています。これだとほとんどの人がホームレスになります。あるいは、絶対的貧困と同様、栄養失調になります。
机の上だけで貧困を語らないでください。
非文化的な人生
他方、渦中の私が思う日本における相対的貧困とは、以下の状態です。
- ギリギリだが食べていて、餓死はしていない
- 住みかも何とか確保している
まかなえているのは食と住だけの状態。衣食住のうち、食と住、水道光熱費を支払うと手元に何も残らない状態。実際、衣類には2〜3年に1回ぐらいしか支出してないです。2017年以降は。今は数百円の冬用手袋を買うかどうかでさえ悩んでいます。
食費以外の商品、物品の購入、サービスの利用は、経済的理由で毎日諦めながら生きている。
- 趣味
- 教養
- 交際
- 進学(未成年の場合など)
こうした活動を断念している時点で、私達はすでに「文化的」な生活なんて送っていなんです。
憲法第25条で唱われている「健康で文化的な最低限度の生活」とはもうこの時点で、バイバイしているのです。
孤独でもある
ボロでも住みかはある。ひどく痩せこけている訳でもない。教育もある程度は受けている。だから相対的貧困は見た目では判別することが相当難しい。
しかも、当事者たちは自分たちが貧困者であることをバレないよう必死に取り繕います。いじめられる懸念、自尊心の問題など様々な理由があるでしょう。
余裕がほとんどない。そのため友人等との付き合いにも消極的になります。交友する、遊ぶにもお金がかかる。しかし払えないんです。また親しくなればなるほど、家庭環境、経済事情が露見しやすくなります。
だから心を開きにくくなる。そのため孤独に陥りやすくなる。経済的にも苦しい。文化的でもない。孤独。もう人間的な生活なんて送れていないのです。
恋とは何でしょう
孤独。これは友人関係だけにとどまりません。貧困者は恋愛にも縁遠くなりがちです。デート費用等がまかなえないからです。
私は2010年にうつ病を発症しました。すぐに寛解できなかった時点で、「自分は一生独身だ」という覚悟をしました。しかし、「一生恋愛経験なし」となると思っていませんでした。
相対的貧困者は、お金がかかる場面を遠ざけて生きています。意識的にも無意識的にも。自分の財布で賄えない物や事を回避しているのです。私にとって恋もその1つでした。素敵な人は周りにたくさんいたのでしょう。でも避けていた、または見えなかったんだと思います。叶わないから。
コロナ禍で生まれた自由時間。半生を振り返った時、ジャズのスタンダード「What Is This Thing Called Love」、「恋とは何でしょう」が頭に流れてきました。
愛という人間らしいことさえしてこなかった。生きるだけで精一杯だった。ブラック企業(正確には暗黒企業)にさえ入っていなければ、うつ病にさえならなかった。生きること以外何もできなかった。ゆとりが全く無かった。
「You Don't Know What Love Is」、「あなたは恋を知らない」という曲もよく頭に響きます。私は恋というものが理解できない人間になっていたのです。それには当然、相対的貧困が大きく影響していたのです。
健康的でもない
非常にデリケートな話で恐縮ですが、私は多分EDです。恋の機会がなかったのと、抑うつ状態であるということが重なった心因性のEDだと思います。
でも病院には行っていません。医療費がこれ以上支払えないからです。
私達は、精神疾患を患っているので、そもそも健康ではありません。ただ、うつ病のような心因性(ストレス性)疾患の場合、そのストレスが原因で他の病気になることがあります。私の場合は、お酒を全く飲んでないのに重度の脂肪肝、脂質異常症、肝機能障害の疑いと5年もの間指摘されてきました。
2019年夏、ある屈辱的な出来事がきっかけでやっと肝臓の治療を始めました。でも案の定、生活費、貯蓄がそこをつく。
県から「総合支援資金」という融資(借金)、市からは「住居確保給付金」という給付を得て危機を乗り越えました。しかし直後に新型コロナウィルス感染拡大。
心を病むほどのストレスを抱えたら、当然、身体にだって不調をきたします。でも障害年金を打ち切られたら、もう1つの病気を治す経済力が無くなるのです。だから、私達は余計に「健康的」ではないんです。
障害者でなくても不健康
一般の相対的貧困者も、すぐに生死に関わる病気でもない限り、病院には行かないでしょう。病気が見つからないよう、あえて健康診断を避けている人もいるでしょう。
相対的貧困者はかなり計画的にお金を使います。常に物事に優先順位を付けています。命に影響のない範囲の病気だったら、食費の方に回すでしょう。
食べないと死ぬので。不健康か死か。
本当は慢性的な痛みがあるのに病院には行かない。そうして医療費を削減する。そんなの不健康すぎますよ。
無料版人生
不健康で非文化的な最低の生活。人間というよりは、もはや動物のような日々。
それでも何とか生きていられるのは、世の中には無料でできることもたくさんあるからです。
私の趣味の1つにジョギングがあります。これはほぼタダでできます。公共図書館で本やCDを借りることもできます。欲しい物が買えなくても、ある物で代用する、または自作することもできます。
でも、やはり無料の物やサービスだけでは、全てはまかないきれないのです。
有料版人生
お金で全てが解決できるとは思いません。しかし、何をするにもお金がかかります。
私は幸い自力で最低レベルの翻訳と簿記会計はできます。そのため何とかオンライン募金システムの導入と、サイトの英語化(必要なところだけ)まではできました。
しかし、重要な広告PRが打てていません。資金が足りないからです。動画を作った方が良いでしょう。肉声で私達の窮状を伝える方が説得力があるはずです。
でもたった1日分の機材のレンタル費さえまかなえないのです。動画撮影・編集をしたことがないので、本当はプロの力もお借りしたいです。
貧困に陥ると可能性、チャンスが必ず一定のところで頭打ちになります。それゆえ一旦貧困に陥るとそこから抜け出すことが難しくなります。貧困のため進学を諦めた子どもたちと一緒です。夢や希望は、貧しい人ほど叶いにくいのです。
もう夢や希望をもつ事自体諦めた人もいるでしょう。私もそうです。
これが無料版人生の限界。
こんな生活の「最低限」といよりは「最低」と言った方が適当ではないでしょうか。
直接支援ができる困難
うつ病、精神障害との闘病自体が大変な困難です。私の場合、調子が悪くなると、ひどい抑うつ状態になります。心の自由が奪われます。病的に不安で、絶望的で、意欲が無くなります。頭が重く、極度の疲労感にも襲われます。
でも皆様が病気の治療、闘病に直接関与することはできません。あくまで医療の問題だからです。こればかりは医師と私達患者が真摯に協力して立ち向かう以外方法はないのです。
でも相対的貧困についてはどうでしょう。
皆様の優しさは直接的な支援・救いに繋がります。その1つの方法がオンライン募金なのです。
ちなみに私は今、広告PR活動につまづいています。特に海外での。ですからこの活動をSNS等で広げて頂けると大変助かります。非金銭的なものでも、そのお気持ちやご支援は本当に嬉しいのです。
もう1度治療に専念できる環境を
お金が目的ではありません。私はただ治療に専念できる環境を取り戻したいだけなのです。
失われた障害年金、生活費を補塡するために無理して日雇い労働を続けていては、むしろ病状が悪化します。治るものも治りません。
得られるものは人権ではなく端金だけです。もう1度、うつ病と真摯に向き合せて下さい。治療に専念させて下さい。
あなたは精神障害を知らない
私の活動、一人暮らしの精神障害者の窮状はとても暗くて重い話ばかりです。でもこうした話の方が実は普遍的です。
日本の出版社やTVが取り上げるうつ病。ほとんどがハッピーエンド。でもそれらは氷山の一角、軽症者に限ったサクセスストーリーなのです。
- ビヨンセ
- デミ・ロヴァート
- ドウェイン・ジョンソン
- ヘンリー王子
- J.K.ローリング
- リリ・ラインハート
- レディ・ガガ
- クリステン・ベル…等
うつ病の経験がある、あるいは闘病中である事をオープンする海外セレブリティはたくさんいます。日本は隠す。がんだったら、すぐに公表するのに。
うつ病を話そう
苦しんでいることを苦しいと正直に伝える。こうした活動が広まらないと、精神障害者はいつまでも忌むべき存在のまま。
うつ病、精神障害について、もっとたくさん話さないといけない。私はそう思います。
あなたは相対的貧困を知らない
相対的貧困についてもそう。
日本の相対的貧困率は15.7%(2015年時点)。G7の中ではアメリカの17.8%(2016年時点)に次いでワースト2位です。17歳以下の貧困率も13.9%と決して低くありません。
日本人の大体6〜7人に1人が相対的貧困者なのです。決して一人ではないのです。話しましょう。苦しかったら苦しいと。
相対的貧困は一人の力では決して解決できません。
私はオンライン募金フォームを設置しましたが、個々の事情にあった支援依頼を心のこもった文章で伝えましょう。残念ながら、それにはSNSは適していません。
1秒でも早く、人間らしさを取り戻しましょう。無料版人生でもまだ挑戦できることはあるはずです。