前回、ThinkPad E585 AMD Ryzen 5 2500Uにて、ChaletOS 16.04が、頻繁にフリーズするという事実を紹介しました。そして、その打開策としてHWEカーネル(カーネルVer.4.15)にアップグレードするという方法を紹介しました。
しかし、その後フリーズが再発。ただ、その発生頻度は以前より低いものでした。
ちなみにフリーズが起きた時には、常に以下のようなログが吐き出されていました。
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 1.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 2.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 3.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 4.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 5.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 6.55 No irq handler for vector
5月 23 20:51:22 xxx-ThinkPad-E585 kernel: do_IRQ: 7.55 No irq handler for vector
このようなログを伴うフリーズは、他のThinkPad E585 AMD Ryzen 5 2500Uユーザーでも、多く起こっているようでした。
Ubuntu 19.04ではフリーズが起こらない?
しかも再発したフリーズに関しては全く糸口が見えず、時間だけ経過。そうこうしている内に、Ubuntuの最新のバージョン19.04(Disco Dingo)がリリース。やがてUbuntu 19.04では、AMD製CPUでもフリーズが発生しないことが報告されるようになりました。
ちなみにUbuntu 19.04からは、カーネルVer.5.0が採用されています。
結果、その推測は当たっていました。
カーネルVer.5.0以上にアップグレードするには
前回、ChaletOS 16.04.2のデフォルトカーネル(Ver.4.8)をHWEカーネル(Ver.4.15)へアップグレードするコマンドを紹介しました。
sudo apt-get install --install-recommends linux-generic-hwe-16.04 xserver-xorg-hwe-16.04
この方法では現在のLTS(16.04)を維持したまま、カーネルVer.4.15まではアップグレードができます。
しかし、これより上位のカーネルへアップグレードするには、別の方法を取らなければなりません。しかし、それらは全てサポートの適用外となります。
Ukuuを使う
そうした中で最もリスクが少ないと思うのは、Ukuuというソフトを使用する方法です。
しかし、この方法もサポート対象外の方法です。
バックアップソフトとしては、「Timeshift」が使いやすいと思います。
以降の手順は、繰り返しになりますが、公式サポート対象外です。あくまで自己責任でお願います。
Ukuuのインストール
Ukuuをインストールするには以下のコマンドを使用します。
sudo apt-add-repository -y ppa:teejee2008/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install ukuu
Ukuuの使用方法
Ukuuを起動するとまずは、利用可能なカーネルのリストの取得が始まります。
その後、インストール可能なカーネル一覧が表示されます。
その中から、インストールしたいカーネルを選択し、右上の「Install」ボタンをクリックします。
私は、2019年5月末時点で最新だったVer5.1.6をインストールしました。
カーネルのアップグレード
「Install」ボタンをクリックした後は、以下のような画面になり、アップグレードプロセスが開始します。
カーネルのアップグレードが終わると、最後に「Close window to exit」と表示されます。指示通り画面下部の「Close」ボタンをクリックするか、×ボタンなどで画面を閉じます。
その後、再起動をします。
起動時のエラーは無視
再起動をすると、GRUBの画面で以下のようなメッセージが表示されます。動作に支障は無いので、気にしないで下さい。
iommu=pt
ちなみに起動時のエラーメッセージですが、カーネルパラメーターに「iommu=pt」を追記すると若干表示が少なくなります。とは言え「iommu=pt」を追記したからといって、動作が安定するという訳でもありません。
変更後のカーネルパラメーターは以下のようになります。
ivrs_ioapic[32]=00:14.0 idle=nomwait iommu=pt
カーネルパラメーターの変更、修正については前回の記事をご参照下さい。
Synapticを使う可能性も
無事に再起動ができても、場合によっては通知領域に「エラーが発生しました…」という警告が出る可能性があります。
その場合、「エラー通知アイコン」をクリックし、その中から「パッケージマネージャーを開始」をクリックします。認証画面が現れますので、パスワードをご入力下さい。
認証が終わると「Synaptic」というソフトが立ち上がります。
破損フィルターを使う
Synaptic起動後、すぐ以下の警告が出てくるはず。
ここでは「閉じる(C)」ボタンをクリックします。
Synapticの本画面になりましたら、左側一番下の「破損」をクリックします。そうすると、右側に破損したパッケージが表示されます。
その後、破損したパッケージの上で右クリック。そして「削除指定」を選択します。
以下のように「×」マークが付きましたら左上の「適用」をクリックします。
次は以下の画面になります。ここでは「Apply」ボタンをクリックします。
再び、Synapticの画面に戻り、左側の「破損」を選択しても何も無くなっていることが分かります。

以上がSynapticを使ったエラーの解消方法です。次回起動時から、エラー警告は無くなるはずです。
カーネルVer.5.2では起動もできず
このようにUkuuを使って、カーネルのバージョンを5.1.xにアップグレードすることで、ThinkPad E585 AMD Ryzen 5 2500UでのChaletOS 16.04のフリーズは、ほとんど無くなります。
ちなみに、この記事を書いている途中、Linux Kernel 5.2がリリースされました。
試しに何回かカーネルVer.5.2にアップグレードしてみましたが、いずれも起動出来ずブラックスクリーンのままで終わりました。
Bluetoothが有効に
こうして平穏を取り戻した「ThinkPad E585 AMD Ryzen 5 2500U & ChaletOS 16.04」の環境ですが、カーネルをアップグレードすることでもう1つ思わぬ収穫がありました。
以前のカーネル(Ver.4.15)では、PC起動時にBluetoothがオンにならないという不具合がありました。しかし、それも解消されたのです。
Ukuuを使う。非推奨の方法です。しかし、カーネルをアップグレードしたからこそ、このような予想外の恩恵を受けることもできたのです。
以前のカーネルに戻すには
最後に、以前のカーネルに戻す方法もお伝えします。
まずはPCに電源を入れます。次にGRUB画面で、矢印キーを使い「Advanced options for Ubuntu」を選択します。そして「Enter」キーを押下します。
その後、インストール済みカーネルの一覧表示画面に遷移します。
その中から、正常に使用できていたカーネルを選択し、「Enter」キーを押下します。そうすると以前のカーネルでの起動が出来ます。
不要なカーネルを削除
しかし、このままでは次回以降も、毎回GRUB画面で「Advanced options for Ubuntu」を選択しなければなりません。もし新しいバージョンカーネルが不要であれば、削除した方が良いでしょう。それもUkuuで出来ます。
まずはUkuuを立ち上げます。
カーネルリストの中から削除したいバージョン(Installed)を選択し、右欄の「Remove」をクリックすると、新しいバージョンのカーネルが削除できます。