「なんなんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」
「保育園落ちた日本死ね!!!」より引用

デモにまで発展したこのブログ。
内容はどうであれ「言葉が非常に汚くて乱暴」ですね。こういう言葉は見たくはないです。最初、男性が怒りにまかせ書いた文章だと思いました。
言葉は立派な暴力
しかし、投稿者は東京都に住む30代前半の女性。2016年3月で1歳になる息子がいるとのこと。
匿名ブログであっても公になる文章。一度ネットに上がった文章はほぼ消せません。今は世論が味方しているから、感じないかもしれませんが、きっと後になって後悔というか恥ずかしくなると思います。自分の言葉の汚さと乱暴さに。
怒る気持ちも分かりますが、人を動かすほどの中身のある内容なのですから、もう少し冷静になって「大人の文章」で投稿して欲しかったと思います。
政治や社会に向けたものであっても暴力的な言葉。「言葉は暴力」。暴力は見たくありません。ちなみにこの匿名ブログに対するコメントも過激で暴力的です。暴力は連鎖するのです。
いつから日本の総人口は1億になったのか
今回の記事はこの匿名ブログの中身に直接関するものでありません。私は親ではないですし、永遠に親にはなれない「絶望の非正規」なので、匿名ブログの中身に関してはノーコメント。
ただし「一億総活躍社会」という分かりにくい歴史的「迷スローガン」に関して、幾つか思うことがあります。具体的には以下のようなことを思っています。
- 政策内容とスローガン・言葉との一致度が相当低い
- 国民のほとんどがこのスローガンを誤解している
- その無駄な誤解が匿名ブログのような不要な怒りや不満を増長
総人口は1億2696万人(概算)
総務省統計局ホームページ/人口推計の結果の概要によると、平成28年6月概算値で日本の総人口は1億2696万人だそうです。予想通り前年同月に比べ16万人も減少しているそうです。
しかし、いずれにしても、決して日本の総人口は1億人ではないのです。これに対して安倍首相は総人口「1億2696万人総活躍社会」と一言も言っていないのです。
もう勝手にスローガンだけが一人歩き。しかもほとんどの国民がその真意を誤解してしまっているのです。
その好例が、最初に紹介した
なんなんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか
という匿名ブログです。
全国民の総活躍なんて保証も約束もしていない
「一億総活躍社会」
このスローガンに対して、大多数の人が「日本国民全ての現在の活躍を保証する」希望あふれるスローガンだと勘違いしているのです。しかし調べてみた結果は言葉と内容は全くかけ離れていました。あまりにも誤解を招きやすいスローガンだったのです。
ですから「一億総活躍社会じゃねーのかよ。(中略)どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」と「言っていることと違うじゃないか」などと、多くの人が【被害者意識】を持って誤解しまうのです。
「活躍が保証されているのに、自分は活躍出来ない。それは政治・社会のせい」。そんな不満は【被害者意識】にしかつながりません。被害者意識は怒りや不満をさらに倍増させます。
本当は少子化高齢化対策のことだった
では「一億総活躍社会」と何なんでしょうか?それは首相本人の発言から読み解くしかありません。
以下原文や写真は、「安倍晋三総裁記者会見(両院議員総会後)平成27年9月24日(木)18:00~18:30」より引用。
目指すは「一億総活躍」社会であります。
少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も、人口1億人を維持する。その国家としての意志を明確にしたいと思います。

なんと「一億総活躍社会」の目的は「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も、人口1億人を維持する」こと、つまり少子高齢化対策だったのです。
いつやるか? 2020年まででしょ!
「同時に、何よりも大切なことは、一人ひとりの日本人、誰もが、家庭で、職場で、地域で、もっと活躍できる社会を創る。そうすれば、より豊かで、活力あふれる日本をつくることができるはずです。
いわば『ニッポン「一億総活躍」プラン』を作り、2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意です」。
確かに「誰もが活躍できる社会を目指している」ことが読み取れます。しかし、前述の「50年後も、人口1億人を維持する」という宣言に比べ、数値目標もなく具体性に欠けます。
具体的数値として挙がっているのは「2020年」。しかも「『ニッポン「一億総活躍」プラン』を作り、2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意です」と述べています。
「2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意」とは、私の解釈が正しければ「2020年までに実現できるように努力します」ということ。単なる決意表明。決して、「全国民の現時点での総活躍」を確約・保証しているのではないと読み取れます。
完全に誤解の一人歩きです。
新三本の矢
さらに安倍首相はニッポン「一億総活躍」プランの実現のために新「三本の矢」を発表しました。
第二の矢、『夢をつむぐ子育て支援』
第三の矢、『安心につながる社会保障』
第一の矢、『希望を生み出す強い経済』
これについては文字通りなので割愛。
第二の矢、『夢をつむぐ子育て支援』
具体的には、「そのターゲットは、希望出生率1.8の実現」と述べています。
第三の矢、『安心につながる社会保障』
具体的には「私は、『介護離職ゼロ』という、明確な旗を掲げたいと思います」としています。
しかし第一の矢は、旧三本の矢と同内容。そう考えると、「一億総活躍」の具体的政策はそれ以外の二本の矢、つまり「希望出生率1.8」と「介護離職ゼロ」の実現ということになります。
やはり「全国民の現時点での総活躍」を約束・保証していはいません。
おわりまで読みましょう
さてこの平成27年9月24日、安倍晋三総裁記者会見(両院議員総会後)の全文を最後まで読んでみます。
「おわりに」という項目で、首相はこの会見をこう締めくくっています。
この安定した政治基盤を大きな力として、長年手つかずであった、日本社会の構造的な課題である、少子高齢化の問題に、私は、真正面から挑戦したいと考えています
やはりこのことからしても、「一億総活躍社会」の骨子は、言葉のイメージとは違い「少子高齢化対策」だったことが分かります。「一億総活躍社会」=「少子高齢化対策」。もっと部分的に言えば、「希望出生率1.8」と「介護離職ゼロ」の実現ということになります。非常に分かりにくいですね。
繰り返しますが「私やあなた(一億総人口)の今の活躍を約束・保証します」なんて一言も言っていないのです。しかも日本の総人口は1億ではありません。概算値ですが1億2696万人です。ですから「総活躍」という言葉も矛盾です。誤解必須の完全なるネーミングミスであることは、誰も否定しないでしょう。
調べてから書きましょう
今回の「匿名ブログ」の投稿者は、「一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」と激昂しています。しかし、今まで述べてきたことからして、彼女は完全に「一億総活躍社会」=「少子高齢化対策」だということについて下調べしていなかったことが分かります。
この「一億総活躍社会」というスローガンについて「一億人が総誤解」をしていたから、誰も間違いを指摘しなかったのでしょう。かつ中身が多くの共感を得たのですからなおさらです。
しかし、匿名、ブログとは言え公になる文章。twitterなどのSNSでもそうです。社会的な影響を考えると、下調べ無しに軽率な発言はできません。今回はこの間違いが悪影響ではなく、政府への問題提起というように変換されました。
しかしこうした誤りが他人を傷つけたり、他人に損害を与えることもあります。私はこの匿名ブログを見て、改めてこう思いました。
※もちろん個人なので裏付け調査、情報収集には限界はあります。
安心して下さい、国は動いてますよ
なおかつ彼女とその共感者達は、さらなる誤解をしています。日本に絶望する気持ちも分かりますが、実は国は少子化、待機児童対策に近年【積極的】に動いているという点です。
社会保障制度改革国民会議の提言
具体的には2013年、社会保障制度改革国民会議は、以下の4分野の改革を提言しました。
- 少子化対策
- 医療
- 介護
- 年金
待機児童解消加速化プラン
同じく2013年には「待機児童解消加速化プラン」が発表。2015~2017年度において、プラン全体の合計で保育の受け入れ枠を約50万人分拡大予定。2017年度末までに待機児童問題を解消することを目指しています。
放課後子ども総合プラン
2014年7月「放課後子ども総合プラン」が策定。いわゆる「小1の壁」対策です。公的な小学校は遅くとも18時で終了。保育園とは違い延長保育はなし。そのことがワーキングマザーの働き方を制限してしまう問題。
少子化社会対策大綱
2015年、新たな「少子化社会対策大綱」が策定。子育て支援、保育所の定員増等、男女の働き方改革等などが実施。
子ども・子育て支援新制度
2015年度からは「子ども・子育て支援新制度」がスタート。この制度では「施設型給付」と「地域型保育給付」の財政支援、また「認定こども園」の改善などが定められました。
失われた少子化対策
このように近年、少子化、待機児童関連の施策は多く打ち出されているのです。目立った少子化対策が、たったの「子ども手当て」だけだった「失われた3年間」に比べれば、本気度と行動力のレベルがはるかに違います。
※その「こども手当」も途中で頓挫。無能な旧民主党による「失われた3年」の損害は天文学的レベルだと私は思います。

コンクリートなんかに予算は割いてませんよ
さらに再々延期で話題になった消費税も目的は社会保障のため。しかもその全額を「年金、医療、介護、少子化対策」の4分野に充てるとしています。
平成28年度一般会計予算の内、その社会保障関係費の割合は33.1%と内訳としては最大。ちなみに平成27年度の一般会計予算での内訳は32.7%と社会保障関係費の割合は、着実に増加しています。

ただし一般会計予算の中での「社会保障関係費」のほとんどは、年金、医療、介護給付の3分野で占められています。といっても、少子化対策にも相応の予算は配分され、昨年度に比べ2.5%増となっています。
確かに、社会保障4分野の内、「年金、医療、介護」≒高齢化対策。それに比べれば少子化対策には十分な予算は配分されていないと思うのかもしれません。それが被害妄想に繋がるのかもしれません。しかし、高齢者の人口の比率などから考えると、緊急度が高いのはどうしても高齢化対策の方です。
2025年問題
団塊の世代の全てが75歳以上(後期高齢者)に達する2025年には、社会保障費に係る費用が2012年度の109.5兆円から、148.9兆円にまで膨らむと予想されています。

中でも介護分野は2.4倍、医療分野は1.5倍。介護費用に関しては特に深刻。2013年度は9.4兆円だったものが2025年には21兆円程度になる見込み。このように高齢者への給付費が急増することは必至なのです。
極端な高齢社会
65才以上の人口割合が7%になると、高齢化社会。そして14%になると高齢社会。高齢化社会から高齢社会に至るまでの期間、日本はこれをたったの24年間で達成しました。世界最高速度。

また全人口における65歳以上の割合(高齢化率)も世界最悪。2014年には過去最高の26.0%になりました。

政治に疎い素人の私が考えてもどうしても、高齢化対策の方を優先せざるを得えなくなるのは分かります。
東京一極集中が原因
本題に戻ります。そもそも待機児童問題の根本原因は、人口の一極集中にあると断言しても良いでしょう。実際に、平成27年4月の都道府県ごとの待機児童数を見てみると、待機児童数は圧倒的に東京で多いことが分かります。東京都の待機児童数は全国の43.59%にもなります。
そう言えば、「保育園落ちた日本死ね!!!」の匿名投稿者も東京都在住でした。

これに対しても、現政権は対策を講じています。
2014年9月、「まち・ひと・しごと創生法」が成立。この中で2020年をめどに東京から地方への転出者を4万人増やし、地方から東京への転入者を6万人減らすとしています。東京圏への一極集中を是正しようとしているのです。
余計な一言、ネーミングミス
「東京都在住」の匿名投稿者や、その賛同者たちも、大変なご苦労をされていると思います。しかし、現政権の積極的な少子化・一極集中是正対策を見ると、むしろ彼らは、無能な前政権による失われた3年のあおりを、今食らっているのではないかと思います。

今怒りの声を上げても、実際の所、現政権は積極的に少子化対策を行っています。それが実るまではどうしても時間が必要でしょう。ですから、彼らが今すぐ「総活躍」することは厳しいでしょう。それなのに「一億総活躍社会」という迷スローガンが打ち出されたのですから、余計に混乱し怒り狂うのも分かります。しかし、本当の怒りの矛先、損害賠償の請求先は現政権ではなく民進党(旧・民主党)にあると私は思います。
怒れること、泣けることは本当は幸せなこと
今回の記事を書こうと思ったきっかけは、今年2月の匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」にはありません。実は数週間前にNHKで待機児童の特集をやっていたのを見たのがきっかけです。
その番組の中で、待機児童問題に苦しむ母親が【泣きながら】、取材に応じていたのを見て、「人ってこんなことで泣くのか」と思ってしまったのがきっかけです。
「こんなこと」と不適切なことを思ってしまったのには訳があります。
このブログで何回か紹介していますとおり、私は世に言う「中年フリーター」、「不本意非正規」、「ワーキングプア」、「団塊ジュニア世代で、貧乏クジ世代」。希望なんて何一つありません。360度絶望です。別にそのことが原因ではないですが、うつ病も患っています。
うつ病の状態がひどい時は、3度自殺の危機に直面しました。3度も三途の川に臨むほど苦しみ、地獄を経験すると、もう余程のことでは泣けません。泣きたくても泣けません。そうした地獄を経験したからこそ素直に「こんなことで泣くのか」と思ってしまいました。
国からも見捨てられた絶望の非正規
世に言う「中年フリーター」の多くは「不本意非正規」。そして正規と非正規には決して埋めることのできない年収格差が。

また男性の既婚率についても正規と非正規での大きな格差が。
【20代男性】
正規雇用:25.5%
非正規雇用:4.1%
【30代男性】
正規雇用:29.3%
非正規雇用:5.6%

このことからすると、中年フリーターは相対的貧困に苦しみ続け、なおかつ、特に男性は生涯孤独で終わる可能性が高いのです。加えて中年フリーターはアラフォー。ですから、そこに親の介護問題ものしかかってくるのです。多重苦。重畳的な苦しみから逃れられないのです。
生活困窮者自立支援法ぐらい
平成27年10月時点での待機児童者数は約4.5万人。一方、絶望の非正規の予備軍である「不本意非正規」の人数は、全体で315万人もいます。その中で一番絶望色が濃い「中年フリーター≒35~44歳」の人数だけでも67万人。待機児童問題も深刻ですが、桁が違い過ぎます。

「ワーキングプア」であるのに親の介護問題に直面すれば、即「親子共倒れ」。生活不可能。そうです。中年フリーターは生活保護予備軍なのです。その予備軍が67万人もいるのに、国は積極的な施策を打っていません。
思い当たるのは、昨年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」ぐらいです。この唯一の施策も「絶望の非正規」の原因を直視し「積極的に打開」するものではありません。単に生活保護受給者数を減らすのが目的です。「消極的」な対症療法です。
我々は国から見捨てられているのです。
総活躍なんて期待すらしていません。
動物園の檻の中から
家庭もない。子どももいない。将来的にも持つ可能性なし。経済的にも苦しい。ひたひたと迫り来る親の介護問題。
そんな深く暗い闇の中にいると、待機児童の件で「涙を流した母親」は確かに辛そうには見えましたが、同時に随分恵まれているなと思ったのです。
泣ける対象となる子どもがいる。守るべき家庭もある。両立が困難かもしれないが仕事もある。着る物にも困らず、立派なマンションに住んでいる。恐らく我々のレベルの金銭苦に陥ってはいないはず。
しかも、問題の少子化・待機児童対策については国が積極的に動いている。社会保障の4本柱に中に「少子化対策」も入っている。生活困窮者対策も社会保障の対象。しかし国は積極的には対処してくれない。
こんなに重畳的な苦しみ、闇の世界に棲む人間からすると、たかだか片手で足りる苦しみで泣き、怒る人たちは、同じ人間でも別の生き物ように感じてしまいます。
絶望に閉じ込められて
我々は「格差の檻」の中に閉じ込められ、国からも見捨てられた種族。それだけでも未来に悲観し、自殺しそうなものです。さらに私はうつ病。更に自殺のリスクは高くなるのです。
そう覚悟すると、確かに理想と現実とのギャップには苦しません。確実に楽になります。しかし、もう世捨て人状態。
世界から隔絶された感覚も持ちます。日々接する人間たちは同じ人でも、まるで別の生き物。まるで動物園の檻の中から、日々人間界を観察しているような生活になるのです。痛みも苦しみもありませんが、ただただ暗く切ないです。

ただし本物の動物園とは大きな違いがひとつあります。我々は国からも見捨てられた場末のとある動物園にある「格差」に閉じ込められた展示物。しかし容姿は人間と同一。誰も珍しがりもしません。
国から見捨てられても、少しでも茶化しに来るヒトでもいれば、少しは賑やかに過ごせるでしょう。しかし、それもないのです。ただただ深くて暗く、社会から隔絶された闇。そこに暮らすヒト科の新種族なのです。
我が子には暴力的な言葉を使わないでください
そんなヒト科の新種族でも「心は人間」。人間の心で最後に一言だけ冒頭の匿名投稿者に言わせて下さい。
「我が子を叱る時は、あんな暴力的な言葉は使わないで下さい」。
「言葉は立派な暴力」です。
三つ子の魂百まで。幼少期に傷ついた心は回復しないことはないですが、人格形成には影を確実に落とすでしょう。あなたの怒りと子供は無関係です。自分の怒りと子どもを分けて考えられないなら、あなたは子どもです。
子どもの心に無駄な影を落とさないで下さい。「絶望の非正規」の分際で、「人間様」になぜそんなことを強く言うのか?
それは、なにせ日本が抱えるもう一つの闇は「若者の自殺問題」だからです。
若者の自殺問題

右肩下がりのJAPAN。生きづらさは増大する一方。厳しい世界にせっかく生まれた命。余計な影や社会・人間不信などを背負わせてしまうと、他人より余計に悩み苦しむため、自殺するリスクは無駄に上がるのでしょう。
子が親より先に逝くのは“ヒト科”共通の最大の悲しみ。だから決して乱暴な言葉で子どもを傷つけてはいけないのです。子どもを苦しめないで下さい。