今までは文章入力関連のソフト、つまりテキストエディターとアウトラインプロセッサーについて紹介してきました。
今回は画像ビューア―について取り上げます。画像ビューアについては、アウトラインプロセッサーとは対照的にソフトの数は非常に豊富です。しかし、残念ながら似たようなものばかりという印象はぬぐえません。
ですから優れた画像ビューアを見つけるのには、大変な苦労をしました。
IrfanViewに敵う画像ビューアはない
ちなみに私はWindowsでは「IrfanView」+「XnView」のセットで画像の表示、管理や編集を行っていました。標準の画像ビューア―としては「IrfanView」、画像の管理と手の込んだ編集については「XnView」という使い分けをしていました。
幸い「XnView」については、ChaletOS(Ubuntu派生)でも「XnView MP」が利用ができます。
しかし、「IrfanView」のLinux版はありません。ですから「IrfanView」に替わる「高機能で軽快」な画像ビューアを探す必要がありました。
「おまけ」のRistretto 画像ビューア
ChaletOSでは標準で「Ristretto 画像ビューア」がインストールされています。他の「Xfce」系ディストリビューションでも標準でインストールされているかもしれません。
本来、画像ビューアとはこういうものなのでしょう。しかし、これほどの単機能だと、当然他の画像ビューアを探したくなります。
XnView MPと2本使いで
しかし「Ristretto 画像ビューア」に代表されるようにLinuxの画像ビューアはお世辞にも高機能・多機能で使いやすいとは言えません。
そのことを考慮すると、助け舟、補佐役として「XnView MP」はインストールしておいた方が良いと思います。
高度な画像編集や、一括処理などは「XnView MP」にまかせてしまい、画像の「表示」はお好みの画像ビューアでという「割り切り」をしないとやっていられないと思います。
XnView MPの入手方法
ちなみに「XnView MP」は「Application Center」からはインストールできません。
入手先はXnViewMP · Powerfull Photo viewer, Editor and Batch Converterになります。このページの一番下に「Download XnView MP X.XX : 」という項目があります。
その中の「Linux DEB 64-bit」または「Linux DEB 32-bit」をクリックし、debファイルをダウンロードします。後は通常通りdebファイルを「Application Installer=(GDebi)」でインストールします。
シンプル、単機能系が多すぎる
多くの画像ビューアを試した結果、Linuxの画像ビューアは以下の2種類に分類出来ると感じました。
- シンプル、単機能系
- 編集機能付きの多機能系
しかも、それらは非常に似ていて、ハッキリとした違いが感じられません。少なくとも▼▼以下の画像ビューアには、目立った違いを感じませんでした。
- Ristretto 画像ビューア
- Viewnior
- Geeqie
- Mirage
- GpicView
gThumbを選んではいけない
しかしそうなると相棒となるべき画像ビューアは、「編集機能付きの多機能系」の分野から選ばざるを得なくなります。と言っても、私の知る限りでは「編集機能付きの多機能系」の画像ビューアは以下の2つしかないと思います。極端ですね。
- gThumb
- Nomacs
知名度は圧倒的に「gThumb」の方が高いです。GNOME向けの画像ビューアということになっていますが、ChaletOS(Xfce)でも使用できます。もちろん「Application Center」からインストール可能。
とてもシンプルなUIです。しかし、以下の3点がものすごく気になりアンインストールしました。
- 背景色が「濃い茶色」にしか見えない
- 画像に勝手に「白いボーダー」が付く
- 編集機能は充実しているが、ほとんど「XnView MP」とかぶる
世界で不評の背景色、変更困難
まず「gThumb」を使用してすぐに嫌だなと思ったのが背景色です。
上記画像の背景色、何色に見えますか。私はずっと「gThumb」の背景色は「濃い茶色」だと思っていました。しかし、本当はかなり黒に近い灰色(#333333)、無彩色だったのです。
一目瞭然。「白」と対比するともう全く「濃い茶色」でなく、ほとんど「黒」にしか見えないと思います。でも同じ色なのです。
恐らくこれはウィンドウの色=明るいグレーやその他の要素との相互作用で起こる錯覚(錯視)なのだと思います。また「Ubuntu=茶色系」という先入観も影響しているのかもしれません。しかし実際は無彩色だったのです。
しかし、物理的には無彩色であっても、知覚的には「濃い茶色」なのですから、背景としては邪魔な色が付いている事になります。そう考えると画像鑑賞には明らかに不向きです。
世界中で不平・不満の声
ちなみに海外でも同じく「gThumb」の背景色を変更したいという要望・質問や、掲示板のトピックが数多く挙がっています。やはり世界的に見ても、この背景色は不評なようです。
しかし、その変更方法はかなり難しいようです。そこまでして「gThumb」を使いたいとは思いませんでした。
動画の背景色は「黒」
実は「gThumb」、動画も再生できます。その時の背景色は「黒」(#000000)です。開発者は一体何を考えているのでしょうか。
常人には理解不能です。
勝手に白のボーダーが付けられる
それはさて置き、2つ目の問題です。それは画像に勝手に白のボーダー(縁取り)が付けられる点です。
本当に余計な事をしてくれます。上記画像は筆者が「SMC Pentax-M 100mm F4 Macro」というオールドレンズで撮った画像。マニュアルレンズということもあり、多少苦労して撮った写真。
それなのに写真に勝手にボーダーを付けられると、撮影者としては本当に腹が立ちます。
撮影者としての感情は一旦さておき、ほんの些細なことですが、少しでも加工が加えられると、写真や画像本来の色や階調、総合的なニュアンスは崩れると思います。
結局、撮影者の視点からも、閲覧者の視点からも良い気持ちがしない画像ビューアでした。インストールする必要もないと思います。
編集機能は多彩で高機能
以上の2点だけでもう「gThumb」は候補外になったと思います。しかし良い点もあります。それはLinuxの画像ビューアの中で最も画像編集機能が充実している点です。
- 自動コントラスト調整
- ガンマ
- 輝度
- コントラスト
- 彩度や明るさ
- カラーバランス調整
- 焦点合わせ調整
- カラーカーブ補正
- 赤目補正
- リサイズ
- 切り抜き…etc
編集機能は相当優秀です。しかし、これらのことは「XnView MP」で全部出来ます。その上「XnView MP」の方が操作しやすいです。また上記以外の高度な編集もできます。ですから、この唯一のメリットも先述のデメリットを打ち消すには及ばないのです。
ただし「XnView MP」が苦手な方には、簡易版の画像編集ソフトとして割り切って利用するのもあるのかなと思います。
それでも画像ビューアとしてはやっぱり失格だと思います。
ChaletOSの画像ビューアはNomacs
続いて、もう1つの編集機能付き画像ビューア「Nomacs」について、メリットとデメリットをご紹介します。
【メリット】
- カスタマイズ性に富んでいる
- シンプルな表示
- シングルショートカットキーが利用可能
- 軽快に動作
- Exifなどの情報の表示方法が「美しい」
- RAWデータに対応
- 必要十分な画像編集機能
【デメリット】
- 画像編集機能が「gThumb」に比べ若干少ない
- Exif情報の対応が完璧ではない
デメリットはこの2つ。
ただしExif情報を通常の画像ビューアで見るのは、写真のプロや写真を趣味としている人のみでしょう。そう考えると、実質のデメリットはたった1つに限られると言えます。
もう1つのデメリットとして挙げた「Nomacs」の画像編集機能も、必要十分で妥当な範囲だと思います。ですから総合的に見て欠点が無いのです。それでいてカスタマイズ性に富み、美しい。これが私が「Nomacs」をお勧めする理由です。
「Nomacs」は「Application Center」からインストール出来ます。Windows版、ポータブル版もあります。
カスタマイズ性に富むNomacs
「gThumb」が画像ビューアとして失格だった理由は、カスタマイズ性の無さにあったと言えます。中でも背景色が変更出来ないという点が致命的でした。
対照的に「Nomacs」は上記の画像のように細かなカスタマイズが可能です。もちろんここで背景色を好きな色に変更することが出来ます。簡単です。
さらにもう1つ「Nomacs」の利点は多彩なショートカットキーにあると言えます。もちろんショートカットキー自体もカスタマイズ可能です。ちなみに私は常に無駄を省いた、最小限のウィンドウ状態で画像を閲覧しています。
※以降は分かりやすさのため、メニューバーだけ表示します。
それでも例えばツールーバーを再表示させたい場合、ショートカットキー「Ctrl+B」ですぐに表示できます。またツールバーの位置もウィンドウの上下左右どこにでも配置出来ます。
ツールバーは「Ctrl+B」でまた非表示にできます。割愛しますがステータースバーも「Ctrl+I」で表示/非表示の切替ができます。
シングルショートカットキーも利用可能
またキーボードの「T」を押すだけでサムネイルの一覧が表示できます。
つまりシングルショートカットキーが利用できるのです。これで素早く画像の検索と表示、編集ができるのです。シングルショートカットキーが利用できるのは「IrfanView」と共通する点です。本当によく出来た画像ビューアだと思います。
割愛しますが、サムネイル上で右クリックすることで、サムネイルの表示位置を変更できます。もちろん上下左右どこにでも配置できます。もう一度「T」を押すとサムネイル一覧は非表示になります。
とにかく美しいNomacs
さらなる利点・個性は、情報表示の美しさです。デジタルカメラで撮った画像にはほぼ必ずExifと呼ばれる撮影時の情報が記録されています。写真が趣味な人やプロの方は、結構な頻度でExif情報を見ます。
「Nomacs」ではExif情報をショートカットキー「M」で表示/非表示が出来ます。
どうでしょうか。Exif情報が「半透明レイヤー状」で表示されるのです。この美しい表示方法は「Nomacs」だけの特徴です。美しい上に決して画像の邪魔にはなっていないのです。センスが良すぎます。
Exif情報レイヤーの上で右クリックすると、表示する項目の変更や、表示位置の変更も出来ます。もちろん上下左右のどこにでも配置できます。
またショートカットキー「O(オー)」で「Overview」の表示/非表示が出来ます。これも美しいですね。
ヒストグラム表示もショートカットキー「H」で表示/非表示ができます。これも半透明表示で綺麗です。
必要十分な画像編集機能
さて今度は「Nomacs」のデメリットについてです。デメリットと言っても「gThumb」と比較してのデメリットです。ですからほとんどデメリットには当たらないと言えます。
実際、画像編集機能も十分にあります。過不足なく、適切な範囲だと思います。ちなみに私が「IrfanView」でよく使っていたのが以下の機能です。
- サイズ変更
- 切り抜き
- 時計・反時計回り回転(※下図参照※)
- Rotate(回転)
ChaletOSの画像ビューアも、実はこれらさえできれば十分だったのです。なぜなら後ろには頼れる「XnView MP」がいてくれるからです。
対応していない主なExif情報
もう1つのデメリット、Exif情報への対応が完璧ではないという点ですが、これは写真のプロの方、または趣味にしている人のみ、気になる点だと言えます。
- レンズ情報
- 撮影モード/プログラム
- ホワイトバランス
- 測光方式
対応がいまいちなのは、以上の情報です。より高度で専門的な情報です。
ですから本当にこれらの情報が見たければ「digiKam」や「darktable」などの専用の写真管理・現像ソフトを使うはずです。※実は「XnView MP」でも見られます。
それでも本音を言えば「レンズ情報」ぐらいは対応して欲しかったですが、この点はこれからの進化に期待することにします。
横道にそれましたが、せっかくRAW画像にも対応しているのですから、Exif情報への対応は結構重要な課題だと個人的には思います。
他の優秀な画像ビューア候補2つ
以上、総合的な視点から個人的には「Nomacs」が最も優秀な画像ビューアだと思いました。ただ、それ以外にも他に2つ優秀だと思ったものがあります。
- Eye of GNOME
- Gwenview
最後にこれらについて簡単にご紹介します。
シンプル系ならEye of GNOME
まず1つ目は「Eye of GNOME」です。これはGNOME環境での標準の画像ビューアです。ですがChaletOS(Xfce)でも利用可能です。「Application Center」からインストールも出来ます。
「シンプル・イズ・ベスト」。この言葉が最も似合う画像ビューアだと思います。非常にクセが無く、スッキリしていて画像を非常に綺麗に表示してくれるソフトだと思います。さわやかな印象さえします。
しかし皮肉なことに、GNOME環境での「Eye of GNOME」は全く別のソフトかと思うほど、印象が違います。
ウィンドウが黒(無彩色)なのか有彩色か、訳の分からない色になっています。同じソフトだと思えません。実際のウィンドウ色を調べると「#3F4646」となっているので、やはり有彩色でした。「Linuxは色が変」。それとも筆者が色にうるさすぎるのか。
しかしChaletOS(Xfce)でGNOME用のソフトを使用するとこうした変な色が、全て明るいグレーになります。
その結果、皮肉にもシンプル系の画像ビューアとしては「Eye of GNOME」が最も優れているという印象となったのです。
画像管理にお勧めGwenview
次は「Gwenview」についてです。「Gwenview」はKDE環境向けの画像ビューアです。
「Gwenview」自体は「Application Center」からインストールできます。しかし、ChaletOS(Xfce)ユーザーの方は以下のコマンドで、さらに追加プログラムをインストールしないと、画像の表示さえできないです。
sudo apt-get install kinit kio kio-extras kipi-plugins
「Gwenview」の良さは、以下の点です。
- スッキリとした画像表示、画面を最大限活用、デッドスペースが少ない
- 省スペースの画像情報(メタ情報)の表示方法
- メタ情報の表示項目がカスタマイズできる
- Exif情報の対応が非常に良い、素晴らしい
以上の特徴からすると画像ビューアというよりは、画像・写真管理に最適なソフトだと言えます。(ノンプロ向け)画像・写真管理用のソフトとしては、Linux界でトップのソフトだと思います。
しかし、それでもお勧めしなかったのには2つ理由があります。
まず1つ目はRAW画像に対応していない点です。画像・写真管理ソフトとしてお勧めするにはやはりRAW画像対応も必須だと思います。
メタ情報表示欄が固定
もう1つの短所は「Meta Information(メタ情報)」の表示欄が伸縮できない点です。
メタ情報と言っても、そのほとんどはExif情報になると思います。先述のとおり、Exif情報への対応が素晴らしいので、どんどん表示項目を増やしてしまいます。
しかし、「Meta Information」の欄は、おそらく画面の半分の高さに固定されているのだと思います。それ以上伸縮が出来ないのです。
もちろん、「Meta Information」欄を縦スクロールすると隠れていた情報は表示できます。でも、それをいちいち行うのは面倒なのです。
これがなかなか、皆様に「Gwenview」をお勧め出来なかった理由でです。こうした点が気にならなければ「Gwenview」は写真・画像管理のソフトとしてはベストとも言えます。
画像ファーストの会
Linuxの画像ビューアを使う際、常に不満に思うことがあります。それはウィンドウサイズと画像サイズの関係です。
模範例として「IrfanView」のケースを紹介します。
「IrfanView」には画像の表示方法として、「Fit only big images to desktop」というオプションがあります。この方法だと、画像ファイルのサイズが、モニターより大きい場合を除き、常に画像サイズにフィットするようウィンドウの方が伸縮するのです。
そのため、余計な余白のないスッキリとした表示になるのです。つまり「IrfanView」は「画像サイズが『主』でウィンドウサイズは『従』」なのです。
他方、Linuxの画像ビューアは基本的にウィンドウサイズありきの設計です。
画像サイズにフィットするようウィンドウが伸縮することはありませんでした。間抜けな場合、小さな画像をウィンドウにフィットするよう拡大させることもありました。
- 画像ファースト
- ウィンドウサイズファースト
どちらが閲覧者目線なのでしょうか?考えるまでもありません。
Linuxの画像ビューアの開発者には是非「画像ファースト」の視点で開発をして頂きたいと思いました。
Nomacsはショートカットキーでフィット
実は「Nomacs」に限って言えば「Ctrl+2」を押せば、ウィンドウが画像サイズにフィットします。この点に関しても現時点で一番「IrfanView」に近い画像ビューアだと言えます。
こうした点も含めると、やはり「Nomacs」が最も優秀な画像ビューアだと思いました。