2016年9月以降、精神障害者「だけ」障害年金の受給が著しく困難に、苦しみは無慈悲に点数化され、そのうめき声はどこへも届かなくなった

2016年11月。うつ病が再燃し、やむなく退職へ。今回は重篤な「睡眠障害」に悩まされました。例えば23時に就寝して、24時台に起きるなどの「超」短時間睡眠のため、深刻な睡眠不足になっていました。当然遅刻や欠勤は多くなり、最後は出社さえ出来ない状態になってしまったのです。

障害者としての自覚

そもそも私のうつ病が発症したのは2010年の4月。しかし、すぐに心療内科に駆け込んだため、重症化はしませんでした。

また私のうつ病は、精神症状(抑うつ、意欲、思考低下など)はほとんど表に出ない「仮面うつ病」です。そのため、2016年の11月まで「健常者」として何の支障もなく「普通に」会社勤めをしていました。本当に誰も私がうつ病罹患者だとは気付かなかったと思います(今もそうですが)。

しかし、6年もの時間が経ってまた重篤な症状が出たことで、うつ病の「しつこさ」と「コントロールのしにくさ」を改めて痛感。

  • 着実に寛解に向かっていたのに、急に悪化したこと
  • 明確なストレス源が見当たらなかったこと

私は一気に「失意の底」に放り落とされました。しかしそこで初めて、自分は(軽度であれ)障害者なのだと考え直すようになったのです。

障害者手帳は取得しておくべき

障害者として生きるためには、障害者手帳が必要。手帳を持っていないと「公的」に障害者として認められ、障害者としての公的手続きや、サービスが受けられません。

しかし障害者手帳を取得したからと言って、プライベートな場面で常に障害者手帳を開示する必要はありません。障害者であることを必ずオープンにする必要性や義務は全くないのです。

  • 自分から開示しない限り、プライバシーは守られる
  • 障害者手帳を持ってても「健常者」として働くことも可能
  • (しかし確定申告は自分でした方が安全)

こうした柔軟性に惹かれ、早速、障害者手帳を取得。一番軽度な3級の手帳を取得しました。

精神障害者雇用トータルサポーターは障害年金のド素人

障害者であっても生き物。食べなければ死にします。ですから仕事はしなければなりません。

そこで障害者雇用の実態を調べるため、2016年11月1日、「精神障害者雇用トータルサポーター」を利用してみました(予約制)。

その前に少し補足。なぜ「精神障害者」にだけ「障害者雇用トータルサポーター」という専門の相談窓口があるのでしょうか?その答えは下図を見ていただければ一目瞭然。「精神障害者」だけ異常なほど雇用率が低いからです。企業側に諸事情があるのを考慮しても、明らかに差別だと頭に血が上りました。

本題に戻ります。担当者から言われたことをまとめると以下のようになります。

  • 障害者雇用は9割近く非正規(契約社員)
  • 給料は最低賃金+α程度
  • 障害者求人数自体が少ない。あっても東京に集中
  • ただし東京であれば正社員の求人もなくはない

ショックでした。非正規で最低賃金+α程度の給与。住みかを失い、行路でくたばるだけ。

障害年金を受給するはすだった

ですから担当者に詰め寄りました。「一体、精神障害者はどうやって暮らしているのか」と。

「大体は障害年金をもらいながら生計を立てているようです。障害厚生年金3級なら『簡単に』申請が通りやすいですよ

ちなみに精神障害の場合、障害厚生年金3級が一番軽い等級です。

少し安心しましたが、実はこの発言の後半部分はまるまる全部嘘でした

私はこの嘘、いや本当は無知だっただけでしょう、いずれによせよこの無責任な発言に振り回され、本当は絶対に通ることのない障害厚生年金の申請のため東奔西走。申請書類を書くための証拠となる書類を集めたり、実際に申請書類を書くなど「かなり大変」な作業をしました。

ちょうどこうした動きを始めた頃、診察があったので主治医に障害年金について相談。最近は、障害年金の審査が非常に厳しくなってきたこと、実際、今までなら審査が通っていたケースも通らなくなってきたことを説明してくれました。そして私の場合は、申請しても通らない可能性が非常に高いと言われました。

「話が違うじゃないか」。とても不安になりました。

それでも当然申請しないことには通らない。申請するかしないかは自己判断とされました。

わずかでもチャンスがあれば挑戦する。それが私の生き方。とは言え、今回だけはさすがに迷いました。しかし信念に従い、診断書の作成を依頼しました。

※障害年金の診断書作成には大体3〜4週間程度かかります。診察書代は1万円程度します

診断書の裏面だけが命

それから3週間後、2016年11月26日。診断書を受け取りに病院へ。内容を見た瞬間「これは本当にダメかも」と思いました。

一旦話はさかのぼります。障害年金について検討する際、一番最初にすべきことはお近くの年金事務所に行く事です(予約制)。そこでまずは障害年金の適用要件、おおまなか認定基準、手続きの流れと必要書類の説明を受ける必要があります。

たとえどんなに重篤な症状でも、これまでの年金保険料の支払い状況が関係したりもします。また、初診時に加入していた保険の種類によっては障害厚生年金「3級」さえ申請できないこともあります。とにかく最初の確認と相談が大事です。

さて、私の場合はすぐに予約が取れたので、「精神障害者雇用トータルサポーター」を利用した3日後(2016年11月4日)に年金事務所で障害厚生年金の相談を行いました。

そこで担当者から説明された「おおまなかな認定基準」は下表のようなものでした。下表からすると、当時の私の病状・状況は障害厚生年金の3級に十分該当すると思われました。年金事務所の担当者もその点は、断言は避けつつ同意はしていました。

しかし同時にこうも言われました。しかしあくまでもこの表は目安、実際は主治医の「診断書の裏面」が重要であると

要支援・要介護の認定と一緒くたにするな

診断書の裏面とは何か。実際に見ていただくのが一番わかりやすいと思います。

つまり診断書の裏面とは、具体的には「2 日常生活能力の判定」と「3 日常生活能力の程度」の診断の事を指します。簡単に言うと、どのくらい他人の支援や援助なしに「暮らせるか」のチェックです。

「精神障害の度合い」や、どのくらい社会生活(例えば労働)に支障をきたしているかのチェックではないのです。

「日常生活能力」とは、もっと具体的には「適切な食事ができるか」、「身辺の清潔保持」、「金銭管理と買い物」ができるかなど。強いて言えば、身体・知的障害者の方向けの診断書だと思いました。

私はこの診断書を受け取った時点で「どこが精神障害者の診断書だよ」とあまりの理不尽さに呆れ返りました。と同時にこんな的はずれで滅茶苦茶な診断書では、障害年金の受給は相当厳しいと痛感

帰宅しもう一度診断書を確認。「適切な食事ができるか」、「身辺の清潔保持」、「金銭管理と買い物」などが他人の支援・援助なしにできるか。これはほぼ介護保険の要支援・要介護認定の基準。要するに完全に判断基準がずれているんですよ

■参考
・診断書(精神の障害用):00000130479jZou5gb2k.pdf

認定基準の表なんてもう無意味

もう一度、時間は診断書を受け取った2016年11月26日に戻ります。確かに診断書の裏面を見て「これは本当にダメかも」と呆然となりました。しかし、もう一度、障害厚生年金のパンフレットを見ました。

そしてもう1度「認定基準」の表を確認。

この「認定基準」にある「労働に著しく制限を受ける」という部分は、当時の私の状況そのものでした。障害のせいで月に5日しか出社できなかったのです。週5日フルタイム勤務なのに。

「認定基準にはほぼ合致している。後は申立書をうまく書けば何とかなるんじゃないか」。そう強く信じ2016年11月28日、障害厚生年金の申請手続きを完了

後は結果を待つことに。ちなみに結果が出るまで3〜4ヶ月かかります

2017年3月10日の午後。厚めの封筒が郵便で届く。到着時期と入っているだろう資料の量から、障害厚生年金の結果通知だとすぐ分かりました。

不安と期待は入り混じりパニック、心臓はドクドクドクと激しく鼓動。震えた手で、一か八か人生がかかった封筒にハサミを入れる。

「不支給決定」

本能が許さない

地獄の底に渾身の力で叩きつけられました。激突の衝撃で心と体がこっぱみじんに砕け散りました。

しかし、こんな大打撃を受けても、悲しいかな命ある生き物。「本能」が食べていけない、このままでは野垂れ死ぬという最大の危機に対して、早急に解決せよと激しい警告と並々ならぬ命令を発するのです。

こうして「本能」に突き動かされた私は、こっぱみじんになった心と体を結び合わせ、「食べるため」の行動を次々に起こし始めたのです。

たらい回しが当たり前

まずは「生活自立・仕事相談センター」へ。しかし「障害者」の生活支援や障害年金のことについては門外漢。何の助言も得られず終了。ただ、より専門的な「障害者生活支援センター」を紹介してもらいました。

早速「障害者生活支援センター」にて相談。確かにより専門的で、豊富な提案を受けましたが、結局のところ私が受けられる可能性があったのは「障害年金」のみだったと判明。しかし「障害年金」には審査請求」(不服の申し立て)の制度があったはず。

そこで担当者に「審査請求」をして、判定が覆る可能性があるか聞いてみました。「私はケースワーカーではないので分かりません」。そこで市内のケースワーカーを紹介してもらいました。

そこで紹介されたケースワーカーは何と私の通院している病院に在籍していました。たらい回し、巡り巡ってスタート地点に戻る。まるで誰かのサイコロゲーム上でもて遊ばれている感じ。果てしない無力感を感じました。

後日いつもの病院にて打ち合わせ。当日、部屋に入ってきたのはいつも受付をしている男性でした。灯台下暗し。「俺はなんてついてない奴なんだ」と苦笑。

しかしながら、ケースワーカーさんに会うことで今回、障害年金の申請が通らなかった理由と背景が全て明らかになりました。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

私の障害年金の申請が通らなかった理由。それは2016年9月1日より新たな「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」による審査が始まったからです。その審査基準は単純です。以前も示した「診断書の裏面」だけで障害等級を決定するという強引極まりない方法です。

数値化・点数化という国家による暴力

その判定方法は、申請者の「日常生活能力」を数値化し、その点数のみによって障害等級を決めるという手法。もうマークシート方式みたいなもの。以下の表を見ていただくと分かりやすいと思います。

横軸は診断書で言えば「3 日常生活能力の程度」の(1)〜(5)のこと。

日常生活能力の程度

縦軸は「2 日常生活能力の判定」の(1)〜(7)の総合平均点。ちなみに「できる」が1点、最も助言・指導が必要なものが4点になります。

日常生活能力の判定

私の場合、横軸(日常生活能力の程度)は(2)、縦軸の判定平均は1.28。1.5未満のため【3級非該当】となったのです。下の表で言えば(2)の列の一番下の黄色の部分。

精神障害者は審査請求が通らない

ケースワーカーさんの説明に、無力感と苛立ちを感じましたが内容は一応理解できました。しかしもう一度障害年金のパンフレットを取り出し「では何のために認定基準の表が載っているんですか」と虚しく問いかける。

いや私も分かりません。ただ残しているだけじゃないんですかね

悲しいやら虚しいやら悔しいやら。この障害者に寄り添った「人道的な認定基準」を信じて闘ってきたのに。「忌々しく紛らわしい、あの表はさっさと消しくれ。厚労省」

虚脱感の中、今回の打ち合わせの最大の目的、審査請求する価値があるかどうか尋ねました(答えは出たようなものですが)。

難しいです。点数制になりましたから

それはそうです。同一の診断書では点数、ポイントが変わりません。ですから不服を申し立てても絶対に判定は覆らないのです。精神障害者は

もうできることは申請のし直しのみ。診断書を書き直してもらわない限り、ポイントが変わらないからです。

「厚労省、お前らは狡猾で非情な組織だ。しかしなんで「精神障害者」を標的にするんだよ

障害年金の給付費抑制が目的

今回の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」、その「大義名分」を簡単にまとめれば、障害年金の支給・不支給の地域間格差をなくし、公平化を図ること。でもこれは誰が見ても見え透いた嘘。

確かにこれまでは障害年金の不支給率に都道府県格差があったことは事実です。

しかし本当は、この事実だけに注意を引かせておいて、裏では今後増加の一途をたどる精神障害者に対して、障害年金の支給を抑制するように認定基準を改悪したのです。要するに中身は、単なる「社会保障費の抑制策」だったのです。

増加の一途、精神障害者

精神障害者には身体・知的障害者とは決定的に異なる点があります。それは精神障害者には心因性」という発生因子があることです。うつ病で説明します。うつ病は発症要因によって3つに分類できます。

内因性:
遺伝や体質などの(概ね先天性)の要因
外因性:
脳に物理的な打撃が加わったことによって生じた場合や、他の病気や薬物が原因の場合など
心因性:
精神的ストレスによるもの
そのため社会にストレスが蔓延すれば、それに呼応し(心因性)うつ病を代表とした精神障害者が増加していくのです。
障害者数の推移(参考値)

障害者数の推移について、平成25年度と平成26年度版の障害者白書(概要)、平成28年度版 障害者白書(全体版)を参考に作成

※公的資料ですが特に身体障害者数のデータに難あり。したがって平成8年と平成23年の値は平成13年と平成18年の平均値をプロットしている。

実際に、精神障害者の数は右肩上がりで増加しています。恐らく、現在では身体障害者数の1.2〜1.5倍ぐらいにまでに達したのではないかと思います。

しかし近年は精神障害者数について納得できる情報は全く開示されていません。都合の悪いは伏せておくということでしょう。※納得できる情報とは障害者手帳保有者の数、あるいは申請者数のこと。

精神障害者が障害年金申請の主役へ

障害者数の推移(参考値)

障害者数の推移について、平成25年度と平成26年度版の障害者白書(概要)、平成28年度版 障害者白書(全体版)を参考に作成

このグラフから明らかなように、もう既に3つの障害者のうち、精神障害者の数が一番多いのは事実です。しかもこのストレス社会では、「心因性」による精神障害者が今後も確実に増加するのです。身体障害者数の2倍、約700万人程度になる日もそう遠くは無いはずです。

日本人の7%が精神障害者

そうなったら、今度は障害者手帳の発行を抑制し、精神障害者の数を無理矢理減らすのでしょう。しかし「障害者の数」はごまかせても、「自殺者数」はごまかせん。浮かばれない死体が増える一方の日本。未来永劫「希望」なんてありません

一方、身体・知的障害者の数は今後も横ばいでしょう。身体・知的障害者数を激増させる外的要因は(今のところ)ありませんから。

※ただし高齢出産によって発達障害児が漸増する危険性はあり。

いずれにせよ今後、障害年金の申請者の大半を占めるのは精神障害者。そして増加し続ける精神障害者による障害年金の申請。それに対して愚直に対応し、真面目に障害年金を支給し続けたら「この国は火の車」

なぜなら障害年金の申請先は「老齢年金」を管轄している「日本年金機構

老齢年金でさえ首が回らないのだから、障害者というマイノリティー、その中でも「プライバシー」、「偏見」と「無理解」の関係で声が挙げにくい精神障害者、これからも増え続けるだろう精神障害者に対して「トランプウォール」を建設したというのが実態であると断言できます。

精神障害者に対するトランプウォール

まるで精神障害者に対するトランプウォール 出典:Report by Homeland Security says Border wall would cost $21.6 billion | Kentucky Breaking News Updates

一人暮らしは絶対に受給できない

一旦怒りを鎮め、話題を「新たな障害等級判定」に戻します。この新たな障害等級判定基準の採用によって、どうやっても絶対に障害年金が支給されない「気の毒な」精神障害者が生まれてしまいました

それは「一人暮らし」をしている精神障害者です

新たな障害等級判定基準は簡単に言うと、どのくらい他人の支援や援助なしに「暮らせるか」という点だけ評価する方法。

しかし、一人暮らしの方には、根本的に日常生活を援助・指導する他者がいません。ですからどうしても「2 日常生活能力の判定」のところでポイントが稼げません。

日常生活能力の判定

ほとんどの項目が「できる」=1点になってしまうからです。「2 日常生活能力の判定」の総合平均点が1点台前半。その時点で請求しても無駄です。絶対に審査は通りません

本当に障害年金が必要なのは単身世帯

しかし(障害年金支給の可能性のある)家族と「同居の障害者」と、障害年金が絶対支給されない「単身世帯の精神障害者」どちらかがお金に困っているでしょう

家賃も払わないといけない、水道光熱費も払わないといけない。社会保険料も課せられる。現金には羽が生え、容赦なく逃げ去っていく。

食べなくても、せめて住む所だけでも確保するため、無理をしてまた働き始める。しかし無理は続かず、病状の再悪化の繰り返し


一人暮らしの精神障害者は「公的支援」無しでは社会復帰がしづらいのです。


また一人暮らしの精神障害者は、苦しみを自分一人で処理しないといけません

つらさや苦しさを訴えられる家族や同居人がいません。ではどちらの精神障害者の方が「苦しみ・障害の比重」が大きいのでしょうか?救われなければならないのはどちらの精神障害者の方でしょうか?

手続き記憶と本能

健常者の方は、障害が軽いから他人の支援や援助なしに「暮らせる」のだと思うのかも知れません。

しかし健常者の方も、意識を失うほど飲酒してもなぜか無事に帰宅し歯を磨いてパジャマを着て寝ていた、などの経験があるのではないでしょうか。

それは帰宅し就寝するという一連の「行動」が手続きとして記憶されているからです(手続き記憶)。

体で覚える「手続き記憶」には、知識や概念、出来事など「頭で覚える記憶」と違い「大脳基底核」あるいは「小脳」が関与していると考えられています。

一方うつ病は主に「大脳辺縁系」あるいは「大脳新皮質」における失調、機能不全が原因で起こると考えられています。

影響を受ける脳の部位が違いので、うつ病であっても「日常生活」=「一連の動作の記憶」=「手続き記憶」に影響は全く無いと考えられます

他の病気、例えば、かなり「重度の認知症」の方も、他の記憶は失っても「手続き記憶」だけはなかなか忘れないそうです

事実「うつ病」の私も睡眠薬が効き過ぎ、起床後すぐ記憶が無くなってしまったことがあります。しかし、気づいたらスーツを着て職場の自席に座っていたこともあります。

ですからうつ病罹患者でもさほど負荷なく「日常生活」(手続き記憶の連続)ができてしまうと考えられます。

とは言え、うつ病だと意欲が低下したりして、確かに日常生活に支障がでることもあります。しかし、生命維持の危機を感じると、やはり本能が心身を突き動かし、少なくとも「適切な食事」は摂るようなると思います

ですから「日常生活能力」だけで判断する新しい等級判定ガイドラインは完全に、精神障害者の病態や日常・社会生活における困難に即していないと言えます。

一人暮らしが最も多い精神障害者

さて厚労省による「姑息ないじめ」によって、完全に障害年金が受給出来なくなった「一人暮らしの精神障害者」。皮肉なことに実は身体・知的・精神の3つ障害者の中で、最も一人暮らし率が高いのは精神障害者です。

精神障害の中でも特に心因性うつ病患者に関しては、過大なストレス事象に遭遇するまでは一般の「健常者」だったのです

「健常者」だったため、当然健常者と同じ量の仕事をし、健常者と同等の給与を得ていました。場合によってはバリバリ猛烈に働き、健常者の平均年収よりも多く稼いでいた人もいたでしょう

いずれにせよ安定して給与を得ていたので、年収に見合った住居で困難なく一人暮らしをしていたのです。パートナーがいなかった場合は。

そんな平穏な生活に突如、過大なストレスが襲いかかることによって「人生の中途で」、突然、「健常者」から「精神障害者」になってしまうのです。「心因性」による精神障害者の人生とは概ねこのようなもの。※決して他人事ではありませんよ

「心因性」という発生因子があるからこそ、精神障害者の「同居者無」率が高いのだと言えます。

良くなってから申請する

精神障害者数が右肩上がりであることは、前に述べました。その主要因は明らかに「心因性」うつ病患者の増加にあるとほぼ断定できます。ストレス社会の象徴であるとも言えます。

(特に心因性の)うつ病には、もう1つ他の精神疾患と異なる点があります。それは(一応の)回復が非常に早いという点です。

上図の通り、うつ病は適切な「休養」と「服薬」を行えば2〜3ヶ月程度でとりあえず一旦回復する事が多いのです。まさしくV字回復です

V時の谷の時には、障害年金の申請なんて考える余裕もありません。まずしっかり休養することの方が重要ですし。

しかし底からはV字回復するため、将来を考え障害年金の申請をしよう考えた時点ではほとんど「症状としては」軽くなってしまっているのです。当然、申請は通らないでしょう。

スムーズなのはV字の谷の時に、家族などが【代理人】として障害年金の申請をしてくれることです。しかし一人暮らしの精神障害者には、手続きを「委任」できる家族などが居ないのです。

あまりにも一人暮らしの精神障害者が哀れです。これでは治る病気も治りません。当然社会復帰もままなりません。

プライバシーと偏見の恐れから

最後に皆様にお伝えしたいことがあります。自分もそうでしたが、精神障害者はプライバシー流出と偏見の目を恐れて、進んで障害者手帳を取得しようとは思わないのです。

ということは実態としての精神障害者数は、下図よりも多いということです。

それは別の言葉で言えば、精神疾患と闘いながら「健常者」として、普通に「一般の職場」で働いている人が、今でも山のようにいるということです。

障害者数の推移(参考値)

障害者数の推移について、平成25年度と平成26年度版の障害者白書(概要)、平成28年度版 障害者白書(全体版)を参考に作成

私もそうでした。「健常者の皮」を被りながら闘病する。全く容易ではない生き方。そんな生き方をしている人が、多くいることは理解していただきたいのです。

こうした精神障害者「固有」の生きづらさは、ひとえに精神障害に対する「偏見」と「無理解」によるもの。偏見と無理解が一番強い障害だからこそ、我々は「障害者雇用」の場でも差別を受け続けているのです。

マイノリティー(障害者のような少数派)には、常に太陽の光が当たるものと、いつも日陰のもの(ダーク・マイノリティー)の2種類がある。精神障害者は常に冷や飯を食わされるダーク・マイノリティー。

私も他人や家族の支援、公的支援の両方とも受けられず「一人暮らし」中。正直もう腹が減って「孤独死」しそうです。

不公平な社会を変えてみたい。
でももう吠える力さえ残っていないんだ。

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