前回は「ChaletOSにWindows7アイコンの導入する方法」について説明しました。インターフェイスがWindowsに近づいて来ると、次は実際にWindowsプログラムを動かしたくなると思います。
幸いChaletOSには「Wine」が標準でインストールされています。ですから適切な「Wine環境」を構築さえすれば、比較的簡単にWindowsプログラムを動かす事ができます。
Staging版がインストールされている
Windowsプログラムを動かすためのソフト、Wineには3つバージョンがあります。
- 開発版(development release)
- 安定版(stable release)
- Staging版(staging release)
この中でChaletOSにインストールされているのは「Staging版 Ver1.9.11」です。
開発版と安定版については文字通りです。しかし「Staging版とは?」と多くの方が疑問をもたれたと思います。
「Staging版」とは、公式の開発版にまだ取り込まれていない機能や、バグ修正が適用されたバージョンの事を言います。
少し特殊なバージョンではありますが、安定しています。むしろ「Staging版」でないと正常に動作しないソフトさえあります。例えば「Mp3tag」。

「Staging版」でないと「アルバムアート」が取得出来ないのです。かなりの痛手です。こうしたこともあるので、無理矢理「安定版」をインストールする必要はないと言えます。
64bit、32bitどちらでWine環境を構築するか
64bit版ChaletOSのユーザーはWineを使う際、まず初めに64bit、32bitのどちらでWine環境を構築するか決めなければなりません。
なぜなら「.Net Framework」が、32bitのWine環境でないとインストールできないからです。
試しに64bitのWineで「.Net Framework 4.0」をダウンロードしようとすると以下の警告が出て終了。
「Winetricks」を最新版にして更新してみても、インストールは途中まで進みますが、やはり以下のようなエラーが出ます。
ですからどうしても「.Net Framework」プラグラムを使いたい場合、32bitでWine環境を構築するしかありません。しかし、仮にWineを32bit環境で構築しても、ご希望の「.Net Framework」プログラムが【正しく】動作する保証は一切ありません。
全く別のOSで、Windowsプログラムを【多数】かつ【安定的】に使おうとしても、まずうまく行きません。「Wine」はまだそのレベルには達していません。
それよりは「代替プログラム」を見つけ、移行する事に尽力する方が、長期的には大きなプラスです。その方が格段に【安定的で安心】な環境になるからです。
64bit版Wineの構築の仕方
以上を踏まえ、まずは「.Net Framework」はインストールしない、64bit版Wine環境の構築方法を説明します。
64bitのWine環境は、以下のタイミングまたはコマンドによって構築が始まります。
- 初めてWindowsプログラムを実行、またはインストールする
- または「winecfg」コマンドを利用する
最初の方は文字通りです。Windowsプログラム(exeファイル)またはインストーラーを「Wine Windows プログラムローダーで開く」ことです。
すぐに自動で各種インストーラーが走り始め、64bitのWine環境の構築が始まります。

全て「インストール(I)」をクリックして下さい。
最終的に「Wine 設定」画面が出れば、ひとまず環境構築は完了です。「OK」で閉じましょう。
今回、筆者はコマンドの方を使って「64bitのWine環境」を構築しました。使用したコマンドは以下です。
winecfg
その後の流れは上述と一緒です。「Wine Mono」や「Wine Gecko」のインストールが自動で走り始めます。
Wine環境の在り処
上述の手順でWine環境が構築されると、ホームディレクトリに「.wine」という隠しフォルダーができます。
この「.wine」の直下の「drive_c」(仮想Cドライブ)を開いてみると、Windowsの64bit版とほぼ同様のフォルダー構成になっています。
ですから例えば、プログラムを手動でインストールする必要がある場合、以下のどちらかのフォルダーに、そのプログラムをコピーをすれば良いことになります。
- ~/.wine/drive_c/Program Files/
- ~/.wine/drive_c/Program Files(x86)/
64bit版のWindowsと基本的には同じ考え方です。
日本語文字化け対策
さて次に必ず行わなければならないのは、日本語の文字化け対策です。
よく「allfonts」をインストールすると、文字化けが解消できると説明しているサイトを見かけます。その通りです。しかし、デフォルトの「Winetricks」では以下のエラーが出て「allfonts」のインストールに失敗します。
しかし対処方法がありました。意外なほど単純な方法でした。
※ただし私はプロのIT技術者ではないので、突っ込みどころはかなり多いと思います。予めご容赦下さい。
sha1sum mismatch Rename 問題
先ほど出てきたエラーには「sha1sum mismatch Rename /home/(以降省略)」という文言が含まれていました。
「sha1」とは確か「ハッシュアルゴリズム」なはず。旧来の「sha1」アルゴリズムを採用した電子証明書が一般的に「SHA-1 証明書」(非推奨)、よりセキュアな「sha2」を採用した電子証明書が「SHA-2 証明書」と呼ばれる事を思い出しました。

個人情報を扱う等の理由で、暗号化通信をしているサイト、つまり「https://」で始まるサイトのほとんどが実は2016年内に「SHA-2 証明書」に移行しました。※実際「SHA-2 移行 お知らせ」で検索すると大量に(早いと2015年~)2016年の記事が出てきます。
その結果Windows XP SP2以前の古いOSでは「SHA-2 証明書」を採用したサイトが見られなくなりました。
現在少なくともネット世界は既に「SHA-2」の時代。それなのに「sha1」から始まるエラーが出たこと自体に違和感と、時代遅れな感じがしました。そのため、実はインストール済みの「Winetricks」は結構古いんではないかと疑いました。
そこで以下のコマンドにて「Winetricks」のバージョンを調べてみました。
winetricks --version
恐ろしや。「20140817 sha1sum:」と書いています。その後の長い文字列は「SHA-1 ハッシュ値」でしょう。文字通りなら2014年のバージョン。古すぎます。これではどんなトラブルが起きてもおかしくありません。
それに、もともとの警告文が「sha1sum mismatch…」でした。ざっくり言えば「(ファイルの)SHA-1 ハッシュ値が違います。ファイル名を変更してから再挑戦を」ということ。そうなるとやっぱり「Winetricks」が古すぎて、突合するファイル(名)に齟齬が生じているんじゃないかと素人ながら感じました。
Winetricksの更新方法
いずれにしてもとにかく古すぎるので、まずは最新の「Winetricks」を使ってみることにしました。
ちなみにこの古い「Winetricks」のファイル本体は「/usr/bin/」内にあります。最初は「/usr/bin/」にある実行ファイルそのものを最新版と「交換」しようと思いました。
しかし念のため以下のコマンドで、パスの優先順位を確認しました。
echo $PATH
「/home/(ユーザー名)/bin」が最優先のパスとなっていました。これであれば、「/home/(ユーザー名)/bin」に最新版の「Winetricks」をダウンロードし実行権限を与えるだけで大丈夫だと判断しました。
binフォルダーを作成
ところが最新版の「Winetricks」をすぐに使える形で配布しているサイトはありませんでした。また、コマンドを使って最新版にアップデートする方法も見当たりませんでした。
しかも「Application Center」からインストールできるのも同じバージョン。
とは言え、実は「Winetrick」のスクリプトの中身を直に見られるサイトは知っていました。そういった場合は「wget」コマンドを使って、最新版の「Winetricks」を「~/bin/」にダウンロードすることができます。
ただその前に、まずはホームディレクトリ(~)に「bin」フォルダーが作成されていないといけません。

今回はどのみち、端末で「wget」コマンドを使うので、「bin」フォルダーの作成も端末で行おうと思います。
まず「Ctrl+Alt+T」で端末を起動します。そこでまず以下のコマンドを入力します。
mkdir bin
そうすると実際、ホームディレクトリに「bin」フォルダーで出来上がります。
※コピーした記事内のコマンドは「Ctrl+Shift+V」キーで端末に貼り付けられます。
wgetコマンドで最新版Winetricksを入手
ホームディレクトリに「bin」フォルダーで出来ましたら以下のコマンドで、「~/bin」フォルダーに移動します。
cd bin
「bin」フォルダーに移動したら続けて「wget」コマンドを入力します。
wget https://raw.githubusercontent.com/Winetricks/winetricks/master/src/winetricks
そうすると実際「~/bin/」に「winetricks」というシェルスクリプトがダウンロードされました。
この「winetricks」に以下のコマンドで実行権限を与えます。
chmod +x winetricks
この状態で続けて以下のコマンドを入力し、最新版か確認します。
winetricks --version
「20170517 sha256sum」。無事バージョンアップが出来ました。※sha256とはSHA-2の一種。
allfontsのインストールも成功
「Winetricks」が最新版になったので、もう一度「allfonts」のインストールを試しました。「allfonts」のインストールはGUIでやるより、コマンドで行った方が3手間ぐらい省けます。具体的には以下のコマンドを入力します。たったの1コマンドで済みます。
winetricks allfonts
無事「allfonts」のインストールが成功しました。エラーは1つも出ませんでした。
実際レジストリ内のフォントの「Replacements」情報も抜けが無く登録されています。
私が気になっていた、ハッシュアルゴリズムが直接原因だったかどうかは不明です。しかし、いずれにしても「Winetricks」を最新状態にしないと「allfonts」がインストールできないのは紛れもない事実です。
これで最低限の下準備は完了です。ただもう1つ「日本語入力」ついての設定があります。
Fcitxのインライン入力設定
それは「日本語のインライン入力」設定です。この設定をしないと、未確定の文字列がウィンドウの外にはみ出て表示されます。はみ出した場所を見ながら変換確定し、次に「Enter」を押すと、ようやくウィンドウ内に文字が入力されるのです。
ウィンドウ内に「直接」日本語を入力する「インライン入力」が出来ないのです。使い物になりません。

※上図はアウトラインプロセッサ「Nami2000」
これを解消するためにはやはり設定マネージャーを開きます。一番下までスクロールすると「Fcitx設定」がありますので開きます。
開くと上記の画面になります。右端の「アドオン」タブをクリックして下さい。
アドオン画面になりましたら、左下の「拡張」チェックを入れます。
次に画面をスクロールし「Fcitx XIM Frontend」を選択し、枠外下の「設定」をクリックします。
上記画面になりますので、右端のチェック欄にチェックを入れて「OK(O)」をクリックします。
アドオンの一覧になりましたら、「拡張」のチェックは外しましょう。
Fcitxの再起動方法
先程「Fctix XIM Frontend」の右側の欄にチェックを入れる際に、「(起動中は変更できません)」との但し書きありました。
これは文字通り「Fcitx」が起動している間は、インライン入力の設定変更は適用されないということです。ですから「Fcitx」を一旦終了し再度起動する必要があります。
だからと言って、わざわざPCを再起動する必要はありません。「Fcitx」だけを再起動すれば良いのです。
その方法は簡単です。「mozc」がオンの状態のとき、パネル右下に「あ」の文字が表示されます。その「あ」を左クリックし、メニューの下から2つ目の「再起動」をクリックします。これで「Fcitx」は再起動され、インライン入力が可能になります。
「mozc」がオフの状態でも、もちろん再起動は出来ます。ただアイコンが分かりにくいです。それと多分使用するアイコンテーマによって、アイコンが変わってくると思うので「mozc」をオンにして「あ」をクリックした方が分かりやすいです。
本来のインライン入力なら、入力している文字のすぐ下に変換候補が出ます。しかし、これもプログラムによってまちまち。今回例示した「Nami2000」はWine上で非常に良く、正確に動くプログラムです。それでもこうして足りない点や不安定な点があります。
これが「Wine」の実態です(執筆時点)。
(参考)Fcitxのクリップボード機能は不要
続いての設定は必須の設定ではありません。あくまで補足。あまり話題になっていませんが、実は「Fcitx」にもクリップボード管理機能が備わっています。
以前筆者はクリップボード管理ソフトは「ClipIt」がお勧めであると説明しました。それ以外にもクリップボード管理ソフトを使っている方はかなり多いと思います。そう考えると、「Fcitx」のクリップボード機能は不要だと思います。
無効にするには、やはり先程と同様の手順で「設定マネージャー」を開き、「Fcitx設定」を開きます。
開いた画面右端の「アドオン」タブをクリック。左下の「拡張」にチェックを入れます。
アドオン一覧の画面を一番上までスクロールします。そうすると「Clipboad」という項目があります。
下図のように、「Clipboad」の左側のチェックを外して下さい。終わりましたら枠外下の「拡張」のチェックも外しましょう。
これで「Fcitx」のクリップボード機能は解除されます。
32bit版Wineの構築の仕方
続いて64bit版のChaletOSでも、どうしても「.Net Framework」が使いたい。そのために32bit版のWine環境を構築する場合の方法について説明します。
やり方は1つしかありません。端末にて以下のコマンドを入力します。
WINEARCH=win32 wineboot
そうすると自動的に32bitでのWine環境の構築が始まります。64bitと時と同じ画面が出ます。
(以降のインストーラー画面は省略)
もう2回上記と同じようが画面が出るので、全て「インストール(I)」をクリックして下さい。「Wine 設定」画面が出れば、ひとまず環境構築は完了です。「OK」で閉じましょう。
もちろん仮想Cドライブ、「.~/.wine/drive_c/」の構成も64bit環境のときとは違っています。
次に以下のコマンドで「allfonts」をインストールします。
winetricks allfonts
このように最初のコマンドが違うだけで、流れは基本的に64bit環境の構築と同じです。ですからもし未実施だったら、続けてインライン入力の設定をすることになります。
Winetricksの起動
以上で32bitのWine環境が整いました。では実際、例として「.Net Framework 4.0」のインストール方法をご紹介します。「.Net Framework」のようなランタイム、DLLコンポーネントをインストールする時は、まず「Winetrick」を起動します。
端末からなら以下のコマンド。
winetricks
GUIであれば、Whisker Menuの「その他」から「Winetricks」は起動出来ます。
「Winetricks」の初回起動時だけ以下の質問が出てきます。ざっくり言えば「Winetricks」に統計情報の送信を許すかどうかという質問です。※この質問は64bitのWine環境でも出ます。
お好みですが、私は「No」を選択しました。続いて以下の画面が出ますが、気にせず「OK」で閉じます。
続いて以下の画面になりますので、「Select the default wineprefix」にチェックが入っている事を確認し「OK」をクリックします。
.Net Frameworkのインストール方法
次に以下の画面になります。
この中から一番上の「Install a Windows DLL or component」にチェックを入れ、右下の「OK」をクリックします。以下の画面に遷移します。
その中から今回は「dotnet40」=「.Net Framework4.0」にチェックを入れ「OK」をクリックします。そうするとインストールが始まります。
途中、以下のように警告が何回か出ます。気にせず全て「OK」をクリックします。
最終的には通常のインストール画面になります。
そして無事インストールも完了します。
それでも繰り返しですが「.Net Framework」がインストール出来たからと言って、ご希望のプログラムが【正常に】動作するかどうかは未知数です。
先に64bitのWine環境を構築してしまった場合
本当は32bitのWine環境を構築したかったのに、間違って先に64bitでWine環境を作ってしまった場合、それでも、32bitのWine環境を構築出来ます。
決して焦って「Wine」本体を【絶対に】アンインストールしないで下さい。
まずは「~/.wine」フォルダーをまるごと削除します。もちろん必要なファイル・フォルダーは必ず事前にバックアップを取って下さい。
その次に以下のフォルダー内にあるWine関連のデスクトップエントリー(拡張子.desktop)やアイコンを全て削除して下さい。
- ~/.config/menus/applications-merged/
- ~/.local/share/applications/wine/
- ~/.local/share/desktop-directories/
- ~/.local/share/icons/
削除が完了しましたら、前述の「32bit版Wineの構築の仕方」と全く同じ手順を踏めば、32bitのWine環境を容易に構築出来ます。
ただし、今回は一回「Wine Mono」や「Wine Gecko」はインストール済みなので、以下の様な画面は出てこないはずです。
逆のことも同様です。つまり誤って32bitでWine環境を先に構築してしまった場合も「~/.wine」フォルダーを削除。そして上述のフォルダー内のファイルを削除します。その後は「64bit版Wineの構築の仕方」と全く同じ手順で64bitのWine環境が作り直せませす。
zonclorXtra-Facebookの修正版配布します
今回は今までと違って端末を使う方法を多めに紹介してきました。端末を使っている内に敏感な方は、「何かエラーで出ているぞ」と感じられたと思います。
確かにエラーなのですが、致命的なエラーではありません。中でも「Theme parsing error」から始まるエラーは、テーマファイルのイージーな記述ミスによるものです。
それらを全て説明すると長くなります。もし以前紹介した「zonclorXtra-Facebook」のテーマをお使いでしたら、その修正版を以下のサイトで公開します。

「zoncolorXtra-Facebook.tar.gz」(105.1KB)をダウンロードして展開し、「/usr/share/themes/」内既存の「zoncolorXtra-Facebook」フォルダーと交換して下さい。※rootユーザーになる必要はありません。ClamTkでスキャン済。

修正した「zoncolorXtra-Facebook」を適用した場合、端末から例えば「Evince」を起動しても「Theme parsing error」のエラーは無くなります。
この修正版を適用しても、出て来るエラーは「テーマ」が原因ではないと思われます。完璧ではないかもしれませんが、よろしければお使い下さい。