電通の過労自殺に隠れた仮面うつ病問題、ブラック企業からは緊急退避 若者の自殺問題、就活自殺、過労自殺 Part4

2016年5月末から書き始めたこの「若者の自殺問題、就活自殺、過労自殺」シリーズ。7月頃から筆者自身のうつ病悪化のため大幅にスケジュールが遅れました。闘病をしている間に2016年10月に。そこで電通の新入社員の過労自殺のニュースが飛び込んできました。

彼女は仮面うつ病

彼女のSNSの書き込みを拝見しましたが、彼女はうつ病による自殺の典型的ケースでした。

ご遺族・関係者の方々には大変申し訳ありませんが、うつ病と自殺の強い相関関係についてぜひ皆様にご理解を深めて頂きたいがために、彼女のSNSを敢えて引用します。

うつ病患者の筆者から見て、まず10月21日の時点で中程度以上のうつ病だったと推測できます。その後、11月5日に「死んでしまいたい」と書いています。いわゆる希死念慮です。SNSとされていますがtwitterでしょう。文字制限や見る人のためへの配慮もあったかもしれません。

彼女の心情とは裏腹に文体はやや軽めです。しかし同じ思いをした人間からすると、もうその時には彼女は四六時中、「死」について考えていたと思います。

間違いなく彼女は、うつ病の中でも「仮面うつ病」であったでしょう。「仮面うつ病」の罹患者は、自らがうつ病であるという自覚がほとんどありません。自らがうつ病の意識がないだけでなく、いわゆるうつ病(=大うつ病)のような明らかな「他覚症状」もほとんどありません。

そのため、過労→実は仮面うつ病が進行→病院に行かず→自殺というパターンが実は相当あると思います。

仮面うつ病とは

先ほどから取り上げている「仮面うつ病(Masked depression)」とは何でしょうか?仮面うつ病とは一般的に知られているうつ病、正式には「大うつ病(Major Depressive Disorder)」とは違い、抑うつ、不安といった精神症状より、睡眠障害や倦怠感などの身体症状の方を強く訴えるタイプのうつ病です。

うつ病の症状

出展:気分障害

私もまさに仮面うつ病の患者です。抗うつ薬を服用してる関係もあり、抑うつ、不安などの精神症状ではほとんど困っていはません。強い睡眠障害と異常な倦怠感などの身体症状に苦しんでいるのです。

このように仮面うつ病の罹患者は、抑うつや不安、絶望感などの精神症状には支配されていません。ですから、いわゆる典型的なうつ病(大うつ病)のように、誰が見てもすぐにそれと分かるような暗い雰囲気、生気がない感じ、悲壮感は漂っていません

周りも分からない

もちろん本人が抑うつ気分などに支配されていなため、ほとんどの日常のことは「普通に」に出来ます。健常者と同じように雑談して笑ったりも出来ます


(情緒不安定性人格障害の患者。抑うつ状態の参考まで。恐らく大うつ病も併発していると思われる。)

大うつ病の人は程度にもよりますが、笑うことはおろか会話さえ困難です(思考がまとまらないためなど)。大うつ病だと上記ビデオの患者ように(よりもひどく)如実に暗く、表情に乏しく、苦しい表情や雰囲気に覆われています。私も一度、勝手に抗うつ薬の減薬、断薬をしてしまい、仮面うつ病→大うつ病に症状が変化したことがあります。

隠されていた抑うつ、不安、絶望感などの精神症状が前面に現れると、ようやくそこで自分がうつ病だという自覚が湧くのです。仮面うつ病の時と違い本当に「体」ではなく「心=自分自身」が相当辛く苦しくなり、喜びなどの感情も喪失し、別人のようになるのです。もう笑うことなんて不可能。多分その時周りは私の異変に気付いていたはずです。

身体症状の苦しさと精神症状の苦しさとでは、精神症状の苦しさの方が100,000,000倍以上苦しかったです。ですから大うつ病だったなら絶対、自分も周りもその異変や苦しさに気付くはずです。

疲れたら眠る本能

自殺の危険性があるのに自覚症状も他覚症状も少ない仮面うつ病。それでも本人自身が(仮面)うつ病であることを疑うべきタイミングが1つあります。

これはブラック企業などに勤めたことがない方は伝わりにくいかとは思います。ヒトは例えば1~2日連続徹夜で働かせられ、疲労の極限に至りそこから開放されると失神し(たかのように眠り)ます

ようやく徹夜地獄から解放され家に着くまでの記憶はかすかにあるのですが、そこからの記憶は全く無し、気付いたらベッドの中。そして起きたらいつ何時か分からず大遅刻。つまりヒトは疲労の極地に陥ると本能的に「意識を失い」眠るようなのです。これは同じような過酷な環境を経験した人の中ではいわゆる「あるある話」です。

(防御)本能なのでしょうか。

ここまで極端でなくても、ヒトは疲労困憊状態になると自然と眠るように出来ています。しかし、11月10日の彼女の書き込みを見ると「怖くてねられない」と訴えています。
疲労困憊なのにどうしても眠れないもうここでうつ病の可能性はあると考えましょう。他人事ではありません。少なくとも「睡眠障害」にはなっています。ストレスによって自律神経が乱れているのです。

過労→うつ病発症→睡眠障害→さらに疲労が累積→うつ病がさらに深刻化→自殺という悪循環も十分に考えられます。

疲労困憊なのに全く眠れないなら、非常に危険な状態です。すぐに心療内科医に通いましょう。

ただ気をつけていただきたいのは、病院の選び方です。ぜひ日本睡眠学会 - The Japanese Society of Sleep Researchの「認定医」に掲載されている病院に行きましょう。実は睡眠障害について不勉強な心療内科も結構あります。

自殺への動機が全く違う

ちなみに電通の新入社員が過労自殺 「行きたくない部署」として評判だった - ライブドアニュースにて、松崎一葉医師は以下のように解説しています。

過労による自殺のほとんどは睡眠不足の状態で起こっている。論理的に見えても脳は疲れ、判断能力が低下して、小さなきっかけでもう死ぬしかないと思ってしまうのです。

確かに過労、睡眠不足により判断は鈍り精神も追い込まれます。しかし、その状況ならまだ大方は自殺未遂まででしょう。まだいくばくかの判断力が残っているでしょうし。もちろん精神的に追い込まれ、衝動的に死に近づこうとする事例が多数あるのは分かります。

しかし、うつ病者とそうでない人ではまず死に対する根本的な動機が違うのです。確かに精神的に追い込まれたら「もう死ぬしかない」という「判断」になるでしょう。しかし、うつ病罹患者は「本当に心から死にたいんです」

的外れ。もう呆れても物も言えません。彼女がどっちの心境だったか。SNSを見れば誰でも分かるはずです

筑波大の教授が、事件の背景に隠れていた「仮面うつ病」を見破れないようじゃ…。それとも彼女のSNSを見ないまま、ライターの質問に答えていたのでしょうか?だったらとんでもない無責任男

SNSも見た上でもうつ病を見抜けなかったのなら、完全なる肩書だけのヤブ医者です。こんな男の見解は無視して、うつ病による自殺は身近で危険なものだという意識を、特に現代の20代、つまりブラック企業に搾取される対象者層には持っていただきたいのです。

自殺から救う2つのタイミング

その人が心身の疲労を長期(2周間以上)で訴えていて、その後に「死にたい」というような書き込みがあった時点で、その人はほぼうつ病です。ですから、彼女の死を無駄にしないためにも、そのような書き込みがあった時点で、友人・知人の方は、ぜひその人を無理矢理にでも心療内科に連れて行って下さい。お願いです。まだその時点なら、救われる命はたくさんあります

12月17日には「遺書」についての具体的な思案をしています。うつ病というと、精神が錯乱状態にあり、冷静な行動・思案ができないと勘違いされやすいです。しかし重度のうつ病でも、不思議と「自殺計画」を「具体的」に練るときだけは、冷静で頭は健常者並に回るのです。

私の場合は、飛び降り自殺のためのマンション・ビルの下調べと屋上への侵入経路を入念に確認していました。どのビルなら確実に死ねるかの選別までしていたのです。後は飛び降りるだけの状態。そこまで行くと、例えば寝ようとしても、自殺の衝動に駆られて興奮し、一睡も出来ないのです。もう死神に取り憑かれているのです。死神が休むことも寝ることも許してくれないのです。彼女も飛び降り自殺。まるで我が事のようです。

死について「具体的」な計画や思案をしている時点で、その人はかなり重度で深刻なうつ病です。いつ自殺してもおかしくありません。自殺関連についての「具体的」で「冷静」な書き込みというのがポイントです。ですから、そんな書き込みを見たら、ぜひその人の髪の毛を引っ張ってでも、無理矢理に心療内科に連れって行って下さい。事実上、ここが最後のタイミングですこのタイミングを失ったら九分九厘、自殺は決行されます

実際、彼女は8日後に亡くなっています。

ストレスチェック制度が早ければ

(仮面)うつ病と自殺の関連性について認識が深まっていたら十分救えた命。ただただ残念でなりません。

彼女の死は2015年12月25日。

厚労省が職場における「ストレスチェック制度」を施行したのが、ちょうど2015年12月(但し労働者が50人以上の事業所に限る)。

実質的にはこの制度が本格的に実施されだしたのは2016年からでしょう。この制度がもう1年前倒しだったら、彼女は自身のストレスの可視化と、うつ病の早期発見・治療ができ、自殺ではなく休職、退職という正しい判断が出来たのではないかと思います。

いや彼女だけでなく、注目さえされず自殺した無数の若者の命がかなり多く救えたと思います。その点も非常に悔やまれます。

厚労省のストレスチェク制度は、事実上日本の労働者に対する「うつ病注意報・警報」だと言えます。その点では大変評価ができます。あとできればうつ病(特に仮面うつ病)と自殺との強い関係について、もっと強く注意喚起していただけると、もっともっと助かる命が増えると思います。

沈む船から逃げることネズミの如し

この事件についてもう1つ驚いたことがあります。それは、「Part3 就活失敗、その後待ち受ける孤独 勝ち組と比較せず公務員試験へ」で指摘した「落ちていく人間からは、友人・知人は蜘蛛の子散らしたように去っていく」というリアル人間界の「自然法則」が、SNS、ネット上でも(恐らく)当てはまっていたということです。※私はSNSに明るくないので推測ですが。

彼女は特徴的なお名前をお持ちでした。ですから友人、知人、同僚なども書き込みを見ていた可能性は十分あったと思います。それでも彼女は救われませんでした。

(うつ病罹患者を)「自殺から救う2つのタイミング」で申し上げた通り、適切なタイミングで心療内科等への通院ができていれば、彼女の命は救われていたはずです。

SNS、ネットは時間と空間の制限がありません。文字制限はありますが。彼女の死を無駄にしないためにも、今後同様の書き込みがあったら友人、知人の方はぜひ通院を促すアドバイスをして下さい。これも心からのお願いです。ネットのメリットを活用しれば、より気軽に互いに助け合う事ができると思います。

※但し窮地に追い込まれた人間に漬け込むやから、第三者もたくさんもいます。必ずリアルな友人、知人がアドバイスをしてあげて下さい

20代は病院に行かない

彼女の自殺に関して、筑波大学大学院教授の松崎一葉医師はまたまた以下のような的外れな指摘しています。

学歴の高い人は知らない人に相談しない傾向もある。日頃から社員が産業医と親密に話す環境をつくるなど、機能するメンタルサポート体制が必要です。

出展:電通の新入社員が過労自殺 「行きたくない部署」として評判だった - ライブドアニュース

しかしこれはかなり馬鹿げていて笑たくなるほどの大間違いです。実際、医師の指摘とは正反対に、東大卒の彼女は「知らない人」でも見られるSNSに苦しい心の中を明かしていました。恐らく誰かに救って欲しい気持ちがあったのだと思います。「知らない」第三者にでも。

それと、実際私のような「低学歴者」も、ブラック企業に居た頃どんなに心身ボロボロでも病院には行きませんでした

上記の表のとおり20代では少しでも体調が優れない時に病院に「行く人の割合」は2.4%と他世代より低く、「行かない人」は28.2%にも至るのです。若者の多くは社会人になる前に大病にかかったり、命の危機を感じたことが少ないのです。悪い意味で自分の心身の限界点を知らないのです。

そのため、他世代より自分の体調、ストレスに対して鈍感であると言えます。それゆえ、心身の不調に対して、私もそうでしたが以下のような甘い考えを持っているはずです。

  • 寝れば治る(※でもうつ病になると眠れなくなります)
  • 休めば治る
  • 病院なんて面倒くさい

まさに患者の心、医者知らず。しかし、この考えが現代では命取りになるのです。

学歴は関係ない

心身の不調に対して鈍感。これは学歴、性別とは関係性がありません。20代の若者に共通することです。今回の事件と「学歴」を結びつけて考えるのは完全に誤りです。どんな学歴であろうとも現代日本の20代、30代には満遍なく過労自殺、過労死の危険性が迫っているのです。

松崎一葉医師にはできれば、この記事を訂正・削除してもらいたい。

彼は「産業精神科医」という肩書を使っています。しかし「産業精神科医」という職業はほとんど聞いたことがありません。(第1回) メンタルヘルスの知識がない上司が壊した部下の心 - コラム - ビジネスEXの中で、彼自身「産業医」として働いていたことを述べています。

産業医 - Wikipediaは少なくとも常時50人以上の労働者を使用する会社が対象。しかし、日本には従業員50人未満の会社が非常に多いのです。

小規模企業者の中で日々行われている「生き地獄」を目に焼き付けたことが無いから、また産業医が設けられる比較的恵まれた環境での経験しかないからゆえの見当違いな発言なのでしょう

地獄絵図

出展:成福院

それだけの経験で、学歴と今回の事件を結びつけるのは彼女の死を完全に無駄にすることと同じです深く反省しなさい

今回の事件と学歴は無関係なのです。

若者、特に20代は「学歴に関係なく」、自身の健康について過信をしないで下さい。世の中には仮面うつ病のように非常に自覚症状、他覚症状ともに少ないうつ病もあるのです。そして自殺の原因第1位はうつ病です。メンタル面も含めた健康管理をしっかり行いましょう。そうでないと誰でも「学歴を問わず」早逝してしまう危険性があるのです。

この医師の著書の中でとても悪い意味で印象に残っている物が1つあります。

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この本のタイトル、変更した方が良いです。「『休職制度利用中』の『うつ』からの職場復帰ポイント」へ。実際、休職からの復職方法についてしか書かれていなかったはずです(※現在はこの医師が関わっていない現役 精神科産業医が教える 「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]が出版されています)。

それに対しブラック企業には「休職制度」なんて人道的な制度はありません。確実に退職に追い込まれるか、解雇されます

また日本の労働者の4割にも達した「非正規社員」は、過労で働けなくなったら契約短縮されるか、契約終了により「失職」するだけです。

主に「休職」が許される恵まれた環境しか知らない医師。現在の地獄の労働環境を知らない医師の発言です。空っぽです。
地獄絵図

出展:成福院

非正規社員だけでも約4割。それにブラック企業が加算。少なくとも日本の労働者の約4割は「休職制度」なんて恵まれた制度をもう活用できないのです。

大手・有名企業もブラック化

今回の事件がショッキングだったのは、電通という大企業で過労自殺が発生したことでしょう。これまでは大企業、有名企業=ホワイト企業という概念があったと思います。

しかし、今や大手企業、優良企業と言われた会社もホワイトから徐々にグレー化、部署によってはブラック化してきていると思います。その背景には以下の要因があると思います。
  • 慢性的な人不足
  • 企業の業績低迷
  • 大企業でも企業内職業教育の崩壊
  • 日本ではドイツのような実践的職業教育制度がない
  • 新卒者には実践経験、即戦力がない
  • 実際現場で求められる戦力とのミスマッチ
  • 結果、一人当たりの業務量増加

もう少子化には歯止めが掛からないので、労働力不足は解消できないでしょう。それなのに、未だに日本の学生は実践的職業教育が行われていないのです。

そうした状況でも未だに即戦力のない、業務遂行能力の低い新卒者を大量に一括採用し続ける訳ですから、どう考えても、本当に求められる戦力との「ミスマッチ」が生じるのです。彼女の死はこうした「ひずみ」によって生み出されたものだと言えます。

そうした「ひずみ」が、もはや日本社会全体に生じているのですから、今や大手企業だってホワイトだとは言えないのです。

絶対に他人と比較しない

もしあなたが今まさにブラック企業で働いているのなら、絶対に行ってほしくないことがあります。

それは同僚などとの比較です。

同じブラックな部署に同僚がいたとします。しかし本人は長期で心身共に辛い状態にある。他方、他の同僚は平気で長時間の仕事をこなしている。そこで、そのタフな同僚と自分を比較し、「自分が弱いんだ」、「自分の方がおかしいんだ」というような誤った解釈をしてほしくないのです。そして自分を責めないで欲しいのです。

長時間労働者

出展:長時間働きすぎると寿命が縮まることが研究で証明される | ライフハッカー[日本版] 一見、長時間労働なんてへっちゃらに見える人も裏では確実に健康が害されている

大切なことは、何がストレスになるかは人それぞれ違うということです。事実、ブラックな環境に耐えられる人間もいないこともありません。しかし、辛いなら、自分の気持に素直になり命を守るための行動、つまり通院、休職、退職、場合によっては無断欠勤を決行してほしいのです。

20代半ばまでなら、ドロップアウトしても何とかなる。私はそう思います。ただしドロップアウト後、すぐ必ず「第二の人生設計」に真剣かつ堅実に取り組むという条件は付きます。そうでなければ、単純に中年フリーター非正規地獄に陥るだけです。

そうならないためにも、もちろん命、心身の健康を守るためにも決断は早い方が良いと思います。

中途採用の基準緩和

日本企業の慢性的な人材不足は、遂に中途採用の基準緩和につながってきました。いずれはそうなるだろうとは思っていましたが、ここまで急速に緩和されるとは思っていませんでした。ここでいう緩和とは中途採用、通年採用における即戦力採用主義の緩和のことです。

上の方のグラフは2014年の調査結果、下は2015年のもの。たったの1年で「必要スキルの経験年数」、「職歴」を重視する割合が下がったのです。実際の求人を見てみても、中途採用で未経験OKという採用が増えてきた気がします。

ただし、そうした恩恵が受けられるのも20代まででしょう。中途採用者の年齢層を2014年(上のグラフ)と2015年(下のグラフ)で比較してみると、「25歳~29歳」では56%→66%に増加しています中途採用の若年齢化、即戦力主義の緩やかな廃止の傾向が見られるのです。※40代の中途採用率もかなり増加していますが、「マネジメントスキル」が重視された結果と考えられます。

いずれにしても決して遅きに失しないこと。今の会社にしがみついて、ボロボロなってから退職。その時点で既にアラサー

それでは今後の選択肢がかなり狭まります。私が強くお勧めする地方公務員試験さえ受けられなくなります

そういう意味も含めて過酷な環境に固執せず、早期に撤退し心身の健康、命を守り、少し休んでから人生再挑戦しましょう。20代半ばぐらいまで、命があれば再挑戦できる

命より大切な仕事はない

ご遺族の方が仰っていますが、実は私もブラック企業を辞めた時、一字一句全く違わないことを心の底から思いました命を失っては再挑戦さえできないのです。

ブラックかどうかが分からない

ブラック企業にしがみつくことは、若者にとって何の得もありません。しかし、残念ですが日本の若者、特に新卒者は今いる会社がブラック企業かどうかをすぐに判断するのが困難だと思います。

なぜならこのシリーズでずっと繰り返してますが、日本ではドイツの職業学校(デュアルシステム)、アメリカのような長期のインターンシップなどの実践的職業教育システムが実施されていないからです。つまり、学生の内に就きたい仕事(ジョブ)が行われている企業で実際に働き、スキルを積み上げる文化やシステムが無いのです。

このことは天文学的なデメリットを日本社会にもたらしています。

日本の学生も働かない訳ではありません。しかし、それはほとんどアルバイトです。接客、サービス業が中心です。卒業後、就職するはずのオフィスワークではないのです。

もし学生の内に、一度でも(できれば複数)実際のオフィス、会社での勤務が体験できていれば、その経験を「物差し」にして、就職した先がブラックかどうかが素早く判断できます

そうした経験の無い日本の学生にとって、会社という組織は人生初の未踏の世界。ですからその社風や制度が、正常か異常かが実際の所すぐには判断できないのです。

隠れ就職氷河期

また、介護、建設、保安などの職業、医療、IT系の技術職以外は、実はまだ就職氷河期が続いています

人気の高い一般事務は有効求人倍率は0.27倍(平成28年1月時点)。

そんな中せっかく掴んだ正社員の地位。それを意地でも逃すまいと思えば、異常だ、しんどいと感じつつもその環境に無理にでも適応しようとするかもしれません。しかし、それはかなりの確率で「過労」につながります。

環境のせいにしてしまう

それでも過酷な長時間労働、パワハラ等を受けているなら当の本人は過労であると気付くはず。多くの方がそう思うかもしれません。しかし悲しいかなブラック企業のようなものすごく過酷な環境ではそうなるとは限りません。

あまりにも環境が苛酷過ぎると当の本人はその疲労、過労の原因を、その過酷な環境のせいにしてしまうのです。これがブラック企業、苛酷過ぎる環境の癖の悪い所なのです。

ですから過酷な環境のせいにしていると、裏で進行している「うつ病」に本当に気づきにくいのです。特に「仮面うつ病」は抑うつ気分、絶望感、意欲の低下、不安などの精神症状が前面に出てきません。仮面うつ病の主訴は身体症状です。疲労感・倦怠感、睡眠障害などです。これだと本当は「仮面うつ病」が進行していても、その疲労・倦怠感が過酷な環境のせいなのか、病気によるものかどうか本当に分からないのです

うつ病にみられる症状

出展:気分障害

あくまでうつ病患者の見立てですが、10月21日の「しぬ。もう無理そうだ」の投稿時点で彼女は中程度以上のうつ病だったでしょう。しかし、それからたったの2ヶ月程度での自殺というのは、今まで聞いたことがない異例の速さです。そう考えると、もっともっと早い段階で彼女は仮面うつ病を患っていたと考えられます。


ブラック企業×仮面うつ病×20代独特の健康への過信=過労自殺


過労自殺への方程式です。

結論 とにかく早く脱出すること

今回の記事の結論は至ってシンプルです。

ブラック企業(ストレッサー)からは至急脱出することです。脱出のタイミングが遅ければ遅いほど以下のリスクが高くなります。

  • 過労によるうつ病などの精神疾患
  • 過労自殺・過労死
  • 壮絶な苦痛に耐え続けるとそれがトラウマ(心的外傷)としてその後の人生に長く残り続ける。これが一番辛いかもしれない
  • 筆者もたった2年の心的外傷の整理に10年もの歳月を費やした
  • 退職後でも、その心的外傷により、うつ病などの精神疾患になる可能性大
  • 20代後半で退職したら公務員試験等が受けにくくなる
  • 脱出が遅ければ遅いほど、将来設計の幅は狭まる

前述の通り人手不足が深刻化したため、中途採用における即戦力の壁は低くなってきたと思われます。しかし、そのメリットを受けられるのはまだ20代まででしょう。ということは20代半ば(できれば前半)までのドロップアウトなら何とかなると私は思います。

退職させないのは犯罪

いよいよ今いる会社がブラック企業だと分かり、会社に辞表を提出したとします。しかし、退職を希望しても辞めさせてくれない会社も日本には多くあります。これもブラック企業の際立った特徴の1つです

会社側は色々な手を打ってくるでしょうが、気にすることはありません。日本では、退職者の権利はかなり強く保護されています。そして会社に退職の意思を伝えたのに辞めさせない行為は「立派な違法行為」です。退職については、労働者であるあなたの方がかなり強い立場にいるのです。

それでも辞めさせないなら、事業所(その企業)を管轄している労働基準監督署に相談しましょう。

もう今や「非正規」の職場もブラック化してきました。私も一度、そうした職場に退職希望を出したのに、なかなか辞めさせてもらえなかった経験があります。その時一度だけ、労働基準監督署に電話相談しました。

かなり具体的で信頼できるアドバイスをしてもらえますあまりにひどい場合はその事業所を指導することもあるそうです。しかし、その時対応してくださったベテランの職員の方は、こうも漏らしていました。

何度指導しても本当に辞めさせないヒドイ会社が増えてきたんだよね。

最初に相談したのは私の方ですが、後半は私の方が職員さんの愚痴を聞くようになっていました。ベテラン職員が愚痴りたくなる程、急激なスピードで日本の労働・雇用環境は悪化しているのでしょう。

暗黒企業・ダークカンパニーとは

毎年恒例の「ブラック企業大賞」。2016年は当然ですが電通が大賞を受賞しました。

しかし、このブラック企業大賞のノミネートと表彰活動、とても有益な活動なのですが実際にブラック企業に勤めたことがある人間からすると、少し違和感があります。

というのは「本当のブラック企業」は必ず以下の2つの要件を満たすため、その存在自体が明るみに出ることはまず無いからです。

  • 絶対に自らの手を汚さない
  • 社員のプライバシーをおかす

特に「絶対に自らの手を汚さない」というのが「本当のブラック企業」、つまり「暗黒企業(ダークカンパニー)」と一般的なブラック企業との決定的な違いです。

今回の事件で言えば、過労自殺、労災の認定といった悪行の痕跡を残してしまうというのは「暗黒企業(ダークカンパニー」だったら絶対におかさない失態なのです。

彼らはあくまで計画的に社員をトーチャーテスト(拷問試験)にかけ、それに耐えられなかった人間には早々に見切りを付け、「計画的」に心身をズタズタにし、「計画的」に自主退職させるか、解雇するのです。ですから「暗黒企業」では過労自殺、過労死はまず起きない(起こさせない)のです

こうして私が生き残ったように。まるで完全犯罪のようなものです。


(ブラック企業・暗黒企業の社員はまるで、この動画のThinkPad T400ように、いやそれより残酷に扱われます)

宇宙に直接観測できない暗黒物質 - Wikipedia(ダークマター)が存在するように、日本にもその存在をとらえることができない暗黒企業(ダークカンパニー)が多数存在するのです

ちなみに宇宙全体のエネルギー中、暗黒物質(ダークマター)が占める割合は22%。日本の暗黒企業(ダークカンパニー)の割合も、その程度かもしれません。

プライバシーを侵害する

また「暗黒企業」は社員のプライバシーもズケズケとおかします。今回で言えば、特徴的な名前を持つ彼女、「暗黒企業」だったらSNSのチェックはされていたはずです。

そこで自社に不利・不利益になる書き込みがあったら、削除の命令とタフな(精神虐待的な)指導があったでしょう。

そう考えると電通が「本当のブラック企業」=「暗黒企業(ダークカンパニー)」だったら、彼女のSNSの書き込みはこうして明るみに出ることは無かったでしょう。恐らく、SNSチェックがされ、プライバシーがおかされていたら、彼女も「こんな会社やっていいられるか」という正当な判断が出来たと思います。

ですから、こうした「暗黒企業」ではない「一般的なブラック企業」の方が、実はかえって質が悪いのです。

私が「暗黒企業」に居たのは2003年~2004年。その頃はSNSが浸透していませんでした。しかし、その時の社長は社員が帰宅後、外出中などの時、全社員の机の中身を必ずチェックしていました

社員の弱みを握るためです。「暗黒企業(ダークカンパニー)」は社員を褒めません弱みを握って、それを利用し社員をコントロールするのです。弱みを握られている都合上、退職後「暗黒企業(ダークカンパニー)」とは争えないのです。

陰湿で姑息かつ計画的

今のSNS事情と比較はできませんが、当時のプライベートツールと言えば携帯電話。当時社長は、皆の前では私に対して普通の言葉使い、叱責などは全くしませんでした

ですが、私も心身ボロボロになり始め人減らしの対象になった頃から、社長から頻繁に携帯に電話がかかってきました。そこでの言葉使いは社内、みんなの前での言葉使いとは全く違い非常に暴力的で、何かにつけて因縁を付け異常な程の叱責や罵倒を続けるのです。プライベートツールを利用して確実で集中的ないじめを行うのです。

これこそが「本当のブラック企業」=「暗黒企業(ダークカンパニー)」なのです。

そんな人権侵害をされたら、彼らの思惑通り誰でも早々に退職したくなるのです。


松崎一葉医師の「論理的に見えても脳は疲れ、判断能力が低下して、小さなきっかけでもう死ぬしかないと思ってしまうのです」という指摘は「暗黒企業(ダークカンパニー)」には当てはまりません

離職への動機づけやそのタイミングまで、経営陣に完全にコントロールされるのです。社員を自殺させるような「事件」、「不祥事」は決して起こさず、利用するだけ利用して捨てるのです

言い換えれば会社にとって最も都合の良いタイミングまで計画的に働かせ続けるのです死んでもらっては人手が足りなくなり困るのです。だから私はこうして生き残りました。しかし、それと引き換えに深刻な心的外傷を一生背負うことになりました。

私は離職が遅すぎ、深い深い心的外傷を負ったことで「今もなお」うつ病と闘っているのです。決して遅きに失してはいけません。

真犯人は人事

結局、この事件は周知の通り、法人としての電通と元上司を書類送検、社長の退任という事態にはなりました(執筆時点)。

しかし、この問題は塩崎厚生労働大臣の指摘通り「社長1人の辞任で済む話ではない」はずです。

この事件の「実行犯」は確かに元上司になるでしょう。でもこの事件の首謀者は確実に人事部、人事の権限を持つ者達です。彼らを追求しない限り、10年もしない内にまた同社で同様の事件が起こるかもしれません。

長引くデフレ不況。広告業界もその打撃を大きく受ける業界。ですから日本の広告市場はかなり縮小していると思っていました。

確かに新聞や雑誌と言った紙媒体の広告費は減少しています。しかしその代わり、インターネット広告費が増加しています。その結果、思っていたよりも日本の広告費は減少していなかったのです。

そう考えてみると、広告業界にとってインターネット広告事業は今後の基幹事業。彼女もインターネット広告を担当する部署に配属されました。

今後会社の屋台骨となる部署に即戦力の社員ではなく、なぜ新人の彼女が配属されたのでしょうか?しかも「行きたくない部署」として有名なデジタル・アカウント部に。

働かせ方改革

恐らくこの部署は「Part2 ブラック企業暗躍の原因分析、新卒一括採用の選考基準は非人道的」で説明した「人」の自転車操業状態になっていたのでしょう。社員構成もいびつになり、人を育てる企業内職業教育も出来る環境ではなかったのでしょう。

彼女がこの部署に配属されたのには、多分彼女じゃなければいけない決定的な理由はなかったと思います。別の「新入社員」が配属れていた可能性も十分あったと思います。

多分「新入社員」だったら誰でも良かったのでしょう。業務遂行能力はなくても「体力」があれば良かったのです。無理が効く新入社員に様々な無理難題、「OJT」という名目の「人間版トーチャーテスト(拷問試験)」を繰り返し、それに耐えた人材のみを残すという、典型的なブラック企業の人材不足解消法がとられていたのでしょう。

こうしたブラック企業の人事の実態、手口、思惑を綿密に捜査し、社会に明らかにしないと、彼女の死から学ぶべき教訓の多くが消えてしまいます。どうかご遺族の方、当時の上司ではなく人事を追求して下さい。ブラック企業の真犯人は「人事」なのです。

そういう意味では「働き方改革」は全く意味をなしません。人事がどのような目的で、即戦力のない新卒者を大量一括採用し、その後どう「働かせよう」としているかが問題だからです。

個々の社員がいかに効率の良い働き方を模索しても、管理する企業が悪行三昧を行っていたら、特に即戦力・スキルの無い若者達は疲弊してしまうのです。

職業教育改革

今本当に行うべきことは「働き方改革」ではありません。むしろ、「働かせ方改革」と「雇い方改革」なのです。しかし、それよりももっと根本的な改革を行わなければ日本の労働者はストレスの火達磨のままです。では何を最初にすべきなのか。それは職業教育改革です。

バブル崩壊後ベテラン社員をリストラし、その後の長期デフレ不況下で新卒者の採用のかなりの長期間抑制してきた日本企業には、即戦力・スキルの無い新卒者を「企業内職業教育」する余裕などもうなくなったと思われます。

ですから現場では即戦力が欲しい。でもなぜか新卒至上主義、新卒一括採用という「古い愚行」だけは残り続けている。それに加え、即戦力採用の対象者の30代後半~40代の多くは就職氷河期世代。つまり我々貧乏クジ世代、ロスジェネは、これと言った職歴・実績がないのです。ですから即戦力社員を雇おうとしても、それに見合う人材が少ないのです。

ここで生じる「雇用のミスマッチ」、「ひずみ」こそがブラック企業が日本に蔓延した理由だと私は思います。

それを解消する方法は1つしかありません。

若者に対して「実践的職業教育」を行うことです。ドイツの職業学校(デュアルシステム)、アメリカの長期インターンシップなどの利点を取り入れることです。ことさらあのリーマン・ショックでも若年層失業率があまり上昇しなかったこと、不況に強かったことを考えると、時間がかかってもドイツの職業教育を導入することこそが今の日本に必要なことだと私は思います。

世代間格差も生まれない

若年層に対する充実した実践的職業教育が行われば、「世代間格差」も今後は生じなくなると思われます。日本の場合、今でも正社員の採用の大半は新卒者が対象です(新卒至上主義)。

この慣行のままだと長引く不況や、リーマン・ショックのような突発的な「世界連動型」の金融危機のあおりを食らうのは、当時の新卒者達です。その結果、「就職氷河期」という不運な世代が生まれるのです。その不運な世代と幸運な世代の格差こそ、世代間格差固定の根本であると考えます。

実践的職業教育が行われ、即戦力をもつ若年層が増えれば、ドイツがそうだったように若年層の雇用はあまり景気に左右されなくなるでしょう。日本企業は確実に人手が足りません。特に少子高齢化の影響は深刻でしょう。

そこに実践的で有能な若者が増えれば、どんな状況でも企業は採用を継続すると思います。そうなれば、「就職氷河期」という言葉もいつしか死語になると思います。また実力・能力で新卒者を評価するようになるため過酷な「人間力」による就活競争、非人道的な「人間力採用」に幕が下ります。その結果、「就活自殺」という日本独特の若者自殺も減少すると思われます

教育ロス

若者に対して実践的職業教育が行われると、新卒者でもそれなりのスキル・職歴を持つことになります。新卒者をいちから職業教育する無駄が無くなるのです。「雇用のミスマッチ」も解消されるため、「人間版トーチャーテスト(拷問試験)」も実行されなくても済むのです

「実践的」職業教育とは学校で理論を学び、実技は実際の企業で習得することを指します。これにより、より最先端で実利的な技術を身に付けられるというメリットがあります。

しかし、それ以外にも多くのメリットがあります。

  • 就職前に企業の実情を知ることができる
  • こんなはずじゃなかったという理由での短期離職が減る
  • 就業の疑似体験によって自分の適性を見極められる
  • それにより、例えば研究者など自分に見合ったコース変更することができる
  • 優秀な研究者が育つ(山中伸弥 - Wikipedia教授のように)
  • 企業実習は、企業と学生の「お見合い」、マッチング制度
  • 企業に対しての自らの技能、能力のPRができる
  • 雇用が自由化されれば、企業側が実習中に優秀と認めた学生に対して早々に内定を与えられる。「直接求人」(企業からの指名型採用)
  • 採用コストが減る

日本人の大学進学理由の第一位は「将来の仕事に役立つ勉強がしたい」だそうです。

しかし、本当に残念ですが、下のグラフを見て分かるように企業側はそんな視点では新卒者を評価していません

企業は「学校で学んだ専門分野」などはあまり重視せず、あくまで人柄の良さ、空気を読む力、雑談力等の「人間力採用」、ポテンシャル採用を行っているのです。大学に進学した目的と結果が乖離してまっているのです。食品ロスという言葉がありますが、まさに教育ロスです。お金と時間のムダです。就活失敗し、非正規地獄に陥った場合、人よっては「奨学金破産」が待っているかもしれません。

研究者コースの大学と、就業とスキルアップのための職業学校。

こうした棲み分けがはっきりすれば、大学に進学するかしないかという判断も明確化出来ます。その結果大学の数と大学進学者数の合理化・スリム化が実現できると思います。そうなれば奨学金利用者の合理化・スリム化も可能になり「奨学金破産」のリスクも減る可能性はあると思います。そうした合理化が浸透すれば、より優秀な研究者の発掘と、それに見合った奨学金制度、つまり無利子の奨学金の拡充なども夢ではないと素人ながら考えます。

実力・能力主義社会への変革

この「若者の自殺問題、就活自殺、過労自殺」を書き始めたのは2016年の5月末。しかし、その間にうつ病が再燃したせいで比較的恵まれていた職場も2016年の11月で辞めざるを得ませんでした。

もともと不安定な非正規雇用と不安定なうつ病。もう不安定な生活は嫌だ。何とか安定した職業に就きたいと思い。今回はハローワークが斡旋する職業訓練制度を活用しようと思いました。

そこでまず、「職業訓練コース合同説明会」に参加してみました。そこで驚いたことがありました。

  • デュアルシステムが採用されているコースがあった機械科(デュアルシステム) - 埼玉県
  • デュアルシステムでのコースでは、訓練生が合わない、嫌だと思ったら訓練先企業を変更できる
  • 企業と人材のお見合い、マッチング制が既に実行されていた
  • 公共職業訓練制度では、直接求人(企業からの指名採用)が既に実施されていた

このデュアルシステムのコースでは、月~木まで企業で働き、金曜日に現場で学んだことを訓練校で復習したり、先生に質問するそうです。まさに本場のドイツと同じです。

※但し企業実習中に支払われる給料は時給900円程度とのこと。この辺りも本場ドイツと変わりないと思います。

仕事ができることが大事

その職業訓練コース合同説明会ではもう1つ心が大きく心が動かされた事がありました。それはポリテクセンター担当者が発した以下の言葉です。

職業訓練では仕事ができることが大事である

仕事が出来ることが大事

出展:平成28年12月20日 「ポリテクセンター説明資料」

思わず資料に線を引いた程、「これこそ探し続けていた言葉だ!」と震えました。

日本の公共職業訓練、つまり数少ない実践型職業教育の対象者は、求職者=失業者や障害者(最近は若年層も対象)。対象者の範囲が狭いのです。しかし、どのような制度になるか分かりませんが、デュアルシステムを行う日本版の職業学校が浸透・定着し、どうのような人でも入学できるようになると、日本人の労働に対する「価値観の革命」、パラダイムシフトが確実に起きると考えられます。

なぜなら、実践型の職業学校では生徒を「実際に仕事ができるかどうか」という視点で評価するからです。なおかつ、実習先の企業側も生徒を同様に「仕事ができるか」、「有能か」、「即戦力か」という視点で評価するからです。つまり、ようやく応募者を実力・能力で評価するようになるのです。こうした変化が浸透すれば日本も実力・能力主義の社会になるはずです。

労働生産性の向上

労働生産人口が右肩下がり×労働生産性が低いまま=経済はマイナス成長へ。このままでは日本の名目GDPはいつドイツに追い越されてもおかしくありません。

実力・能力主義の社会になれば、自ずと一人当たりの労働生産性も向上するでしょう。小手先の経済対策を行うより「職業教育改革」の方がはるかに効果的なのです。

2年制では無理

職業教育と言っても、最初は誰でも素人。素人の学生がその職業の知識と初歩の技術を習得するには最低でも2年必要です。2年でもキツキツです。

2年制の専門学校に通ったことの無いであろう政治家、官僚の方たちへ、職業学校を2年制にしたら必ず失敗します。企業での実習ができるようになるには最低2年必要です。企業での実習は3年目以降からです。初めの1年~2年から企業実習しても無意味。企業にとっても足手まといの大迷惑。2年制にしたら、せっかくの「実践型職業教育(デュアルシステム)」も早々に破綻するでしょう。そんな残念なことは絶対にしないで下さい。

まずはインターンシップの拡充を

「若者自殺問題、就活自殺、過労自殺」もいよいよ最後のまとめとなりました。

このシリーズは本来ブラック企業という言葉がなかった時代に、周囲の理解さえ得られず、若くして星になっていった同世代の仲間たちを弔うために書きました

しかし、今もなお電通の過労自殺事件など状況は変わっていません。むしろ悪化したかもしれません。こうした状況を打破するには、以下の点を早々に実施することが大事だと考えます。

  • 若年層に対する実践的職業教育制度(デュアルシステム)の拡充
  • それがきっかけで日本も実力・能力主義になる
  • スキルのある人材・若者が増えることで、労働生産性が向上する
  • 労働生産の向上があって初めて、長時間労働の抑制に繋がる
  • 雇用の自由化、直接求人も可能とする
  • 新卒一括採用の即時撤廃(新卒至上主義ではなく実力・能力主義になるため)

上記の事を実現することで、現在の過酷な労働環境の元凶となっている「雇用のミスマッチ」と「労働生産性の低さ」が解消出来るのです。労働生産性の向上なくして「働き方改革」の実現なし。労働生産性が向上すれば、恐らくこれまでより、労働時間が減り、有給や育休なども取得しやすくなるでしょう。そこで初めてワークライフバランスの実現が図れるのだと思います。

とは言え、実践的職業教育制度の拡充は教育制度の抜本的な改革のため、実現には時間が相当かかるでしょう。それまでの間は、アメリカのようにインターンシップ制度の拡充と自由化を行うべきでしょう。またそこで有能と認めた学生に対する直接求人も可能とする雇用の自由化も行うべきです。そうすれば、新卒一括採用という「愚行」も自然消滅するでしょう

インターンシップの拡充だけでも労働問題における諸悪の根源、「雇用のミスマッチ」が大分解消されると思います。その結果、就活自殺、過労自殺、過労死も確実に減少すると思います。政治家の方には、まずは今すぐにでもインターンシップの自由化と拡充に尽力していただきたいと思います。

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