未だ正社員の有効求人倍率は1倍未満 命さえあればやり直せるはもう嘘かもしれない

有効求人倍率、1倍台回復 6年1カ月ぶり

この見出しは2013年(平成25年)12月27日の日本経済新聞の見出しを引用したものです。

このことは多数のメディアで取り上げられたので、現在の日本の有効求人倍率は1倍を超えていることは、おそらくほとんどの方はご存知のことだと思います。

しかし、この記事では、有効求人倍率を上昇させているのは、大半は非正規だと指摘しています。現に当時の正社員の有効求人倍率は0.63倍と、1倍未満でした。

以下記事の原文

厚生労働省が27日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.00倍となり、求職者に見合う求人数がある1倍台を6年1カ月ぶりに回復した。ただ、正社員に限った有効求人倍率は0.63倍にとどまり、新規求人の大半は非正規だ。

正社員の有効求人倍率は1未満

残念ながら、この記事から2年経った今でも、正社員の有効求人倍率は1倍未満です。

厚生労働省の「労働市場分析レポート 第60号 平成28年1月29日」(pdf)によると、確かに「平成27年(2015年)の有効求人倍率は 1.20倍となり、平成3年(1991年)の1.40倍に次ぐ24年ぶりの高さとなった」ようです。

しかし、「正社員の有効求人倍率」は、平成27年(2015年)時点でも、まだ0.75倍とまだまだ1倍未満なのです。

有効求人倍率の推移

「労働市場分析レポート 第60号 平成28年1月29日」により筆者作成

増え続ける非正規雇用

それとは対照的に、非正規雇用の割合は年々増加傾向にあります。

昨年(2015年)末のニュースでご存知だと思いますが、ついにはパートや派遣などの非正社員が労働者に占める割合が初めて4割に達したのです。

上のグラフで特筆すべきは、やはり緑の「正規雇用者」の数は、2005年(平成17年)以降、横ばいかやや右肩下がりである点です。

これらのことからすると、2013年12月27日の日本経済新聞で指摘のように、2年経っても、いまだに、一般有効求人倍率への非正規の貢献度は高いままであると推測されます。

非正規雇用が増えている理由

非正規雇用が増えている理由は様々考えられます。ただし厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果(平成27年11月4日、pdf)によると企業が非正規雇用者を雇い入れる主な理由は以下のようです。

第1位:賃金の節約のため(38.6%)
第2位:1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため(32.9%)
第3位:即戦力・能力のある人材を確保するため(30.7%)
第4位:専門的業務に対応するため(27.6%)
第5位:高年齢者の再雇用対策のため(26.6%)
第6位:正社員を確保できないため(26.1%)

1位、2位と6位は、不況のご時世、ご想像の通りだと思います。

しかし、意外と思うかもしれませんが、現在企業は非正規雇用者の採用に当たっても、「即戦力主義」(3位、4位)を取っているのです。このことについては、本記事の後で触れたいと思います。

話を非正規雇用者の増加原因に戻したいと思います。ここで関連するのは、第5位の「高年齢者の再雇用対策のため」(26.6%)という理由です。

2007年問題とリーマン・ショックのダブルパンチ

2007年問題というの覚えていますでしょうか?

2007年当時は定年の年齢は60歳。
そうすると団塊の世代、中でも最も多い1947年生まれの労働者が、2007年に一気に定年を迎え、大量に退職するという問題でした。

このことは企業にとっては痛手。人手不足になるため、実は2007年~2008年の間は企業は新規採用に積極的だったのです。

しかし、運悪く100年に一度の大不況、リーマン・ショックが襲ってきたのです。

内定取り消し問題

そこで起こった事件が「内定取り消し」問題でした。
せっかく勝ち取った内定が、企業の都合、大不況のせいで取り消しになったのですから、本当にかわいそうだと思いました。

悲運な宿命、貧乏クジ世代

繰り返しになりますが、2007年問題対策として、当時、企業の採用活動は積極な動きを見せていました。

この滅多にないチャンスを必死に掴もうとしていたのは、何も新卒者だけではありません。

今では中年フリーター」と呼ばれている団塊ジュニアの世代も、このチャンスを必死にものにしようとしていたのです。

私達、団塊ジュニア世代は、新卒時にバブル崩壊による「就職氷河期」に直面しました。ですから、新卒の時点で非正規の道を選んだ者も少なくなかったのです。

これは私の例ですが、なんとか就いた会社が「ブラック企業」だったケースもあります。ブラック企業で人生を台無しにしたケースが現れ始めたのも、この私達世代からだと思います。

私の場合は、「ブラック企業」で心身ともボロボロになったため、とにかく療養が必要でした。ですから、治療の一環として比較的短時間で勤務できる派遣社員の道を選んだのです。

命さえあればやり直せるはもう嘘かもしれない

非正規の仕事は、ブラック企業に比べれば天国。やっと奴隷から人間に戻った気がしました
しかし、仕事は楽ではあったものの低収入。スキルアップも出来ず、将来は見通せませんでした。そうこうしている内に、あっという間に30歳を迎えました。

そろそろ身を固めようと思っていた矢先、2007年問題に絡んで、新規採用活動の活発化が訪れたのです。

よし、この機会に「もう一度正社員になるぞ」と決めていた団塊ジュニア世代は相当いたはずです。

しかし、程なくリーマン・ショックが襲来(当時私達は30歳前後)。

当時は正社員の仕事を探しても全く見つからないか、「新卒限定」のものばかりだったのです。

有効求人倍率の推移

「労働市場分析レポート 第60号 平成28年1月29日」により筆者作成

それもそのはず、2009年(平成21年)の正社員の有効求人倍率は、なんと、0.28倍と悲惨な数字だったのです。

もちろん中途採用も中にはありましたが、どこも「安定」とはかけ離れた中小・零細ばかり。しかも常に求人を出している明らかな「ブラック企業」もかなりあったのです。恐らく、このタイミングで焦って「ブラック企業」に入ってしまった人も相当数いるのではないと推測します。

新卒至上主義と超即戦力主義

日本企業にはとても悪しき雇用風土が2つあります。

  • 新卒至上主義
  • 中途採用は(今やスーパー)即戦力主義

まず一番目は「新卒至上主義」です。これは大企業に多く見られる現象ですが、新規採用の対象を新卒者に限定してしまうのです。ですから、今や大企業はほとんど中途採用をしていないのではないでしょうか。

これは太古の「終身雇用制度」の名残とも言えます。また、無垢な人間の方が、企業の都合よいように育てられるという本音も見え隠れします。

いずれにせよ、日本では新卒で正社員になれなかったら、その時点でいわゆる「(新卒は)最高の就職用プラチナチケット」を失ったことになるのです。

「雇用の流動性」というグローバルスタンダードから見れば「変な習慣」でしかないのです。

話を団塊ジュニア世代に戻せば、新卒時(90年台後半~2000年台前半)、就職氷河期だったので、多くの人がその「就職用プラチナチケット」を失ってしまったのです。そこで問題となったのが「フリーター」の大量発生でした。

中途採用は原則、即戦力主義

こうして新卒で正社員になれなかった多くの団塊ジュニアの多くは、不本意で非正規で暮らすようになったのです。

また、うまく新卒で正社員になれても、早期にドロップアウトした人は転職に成功せず、やはり多くは非正規になったと思います。それはなぜかというと、日本の転職・中途採用市場は、新卒至上主義とは正反対に、(今や過度な)「即戦力主義」だからです。

早々に退職したら即戦力なんて到底身についてはいません。しかも昔は今ほど深刻な人材不足ではなかったため、第二新卒者を積極活用しようとする気運もなかったのです。むしろ、第二新卒者には落伍者という差別や偏見のようなものもありました。

かくして非正規になりキャリアやスキルを身につけられなかった人々の中には非正規地獄・ワーキングプアから抜けるべく、2007年問題に絡む企業の積極採用に一発逆転をかけた人も多かったはず。

しかし中途採用は原則、即戦力主義。特筆すべきスキルや経験が無い非正規労働者はまるで爪弾き。実際に私も、何度も何度も何度も、繰り返し繰り返し応募しても、一社も書類選考さえ通らなかったのです。

旧・民主党による失われた3年

それでも、リーマン・ショックに対して早々に景気雇用対策が実施されていたら、何らかの救済があったのかもしれません。しかし当時は旧・民主党政権。あの「決められない政治」は、今で言う「アベノミクス」のような景気・雇用対策を打たなかったのです。

それが、正社員の有効求人倍率0.28倍という歴史的に最悪な数字をもたらしたのです。

そんな時に、どんなに転職活動しても、一社も書類選考さえ通らないはずです。

あの時、必死にもがいてのたうち回っている時にハッと気づいたのです。

昔はよく「若いうちは何度でもやり直せる」、「最悪、命さえあればやり直しはきく」と聞かされたけど、「現実は全くの嘘じゃないか」と。

もう私は今は転職活動なんてしていません。やるだけ無駄。転職というより人生を諦めました。

団塊世代、親世代も非正規

大分横道にそれたので、話を非正規雇用の増加原因にもどします。
近年の非正規雇用増加の一因は、2007年問題などで大量に退職した団塊世代などの高齢者が、現在非正規で働いているからです。

2013年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行されました。それにより、企業は60歳で定年を迎えた従業員が【希望した場合】は、その人を65歳まで継続して雇用する義務が生じたのです。60歳で一旦定年を迎え、退職した希望者を再雇用するにあたり、非正規として、なおかつ以前よりも安い給料で再雇用するケースが増えたのです。

それが、前に触れた第5位「高年齢者の再雇用対策のため(26.6%)」につながるのです。

総務省の「統計Today No.97」でも非正規雇用の増加原因として以下の点を指摘しています。

非正規雇用の増加は、

  • 非正規雇用の割合が高い60歳以上人口が増加したこと
  • 労働市場への女性の参加が増加したこと

などが要因

団塊世代が非正規ということは、貧乏クジ世代(=団塊ジュニア世代)の親の多くも非正規ということです

2025年問題

団塊の世代についてはもう一つの問題が指摘されています。
それが2025年問題です。

簡単にいえば、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達するという問題です。この問題については、介護・医療費等社会保障費の急増という点で問題視されていることが多いです。

ところが、この団塊の世代は、我々貧乏クジ世代=中年フリーター層の「親」でもあるということを決して忘れていはいけません。

親子共倒れの危機

中年フリーターとは、具体的に言えば、現在(この記事を書いた時点)アラフォー(40歳前後)で非正規雇用で働いている人たちを言います。概ね、ワーキングプア層でもあります。

中年フリーターは団塊ジュニア世代でもあります。そしてその親である団塊の世代は、現在、概ね65歳以上(高齢者)となっています。

中年フリーター自体も40代を迎え、自身の健康問題も抱えだす時期でもあります。

しかしもっと重大なのが、親の介護問題です。つまり、中年フリーターの多くがここ数年で、親(=団塊の世代)の介護問題に直面する可能性が高いのです。

自身がワーキングプアという相対的貧困に苦しんでいるのに、そこに親の介護の問題が絡んでくるのです。親の介護度などにもよりますが、介護のために、非正規の仕事さえ辞めざるを得なくなる可能性が高くなるのです。

親も子も働けない危機、親子ともに貧困層になる日が、もう数年先に迫っているのです。このことは本当に深刻なのに、ほとんど見過ごされています。問題視しているのは、このブログでも何度も紹介している「週刊東洋経済 2015年10/17号 [雑誌]」ぐらいでしょうか。

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もちろん当事者である私達、中年フリーター層は、親の介護問題について危機感を持っているはずです。しかも、私の場合は、自身がうつ病です。申し訳ないけど、親の介護ができるとは到底思えません。

おそらく2025年を迎える前に「親子共倒れ」問題で、社会が騒然となる可能性の方が十分高いと私は考えます。

中年フリーターは生活保護受給者の予備軍

2014年の日本人の平均寿命は男性が80.50歳。女性が86.83歳。
しかし健康寿命は男性が71.19歳。女性が74.21歳。

つまり不健康期間は男性が約9年、女性が約12年もあるのです。

仮にこの統計を使って考えれば、例えば母の介護で約12年間離職し、その後復職したとしても、おそらくまた非正規でしょう。

介護の期間は貯金もできないでしょう。しかも復職する頃にもう50代。復職できる可能性すらかなり怪しいのです。

非正規雇用も即戦力主義に

約12年のブランクがある50代が復職できる可能性が怪しいと書いたのには理由があります。

ここで思い出していただきたいのが、「非正規雇用が増えている理由」で説明した、企業が非正規雇用者を雇い入れる理由の3位と4位です。

第3位:即戦力・能力のある人材を確保するため(30.7%)
第4位:専門的業務に対応するため(27.6%)

中途採用は原則、即戦力主義と前述しましたが、実は、非正規の労働市場も「即戦力主義」が浸透しているのです

何で、非正規雇用まで即戦力主義になってしまったかは、色々原因があると思います。

ただし、2007年問題で人材不足になると分かっていながら、リーマン・ショックが襲来+旧・民主党の失われた無策の3年間のトリプルパンチで、結果的に予想通り企業が慢性的に人材不足に陥ってしまったことが大きな原因であると思います。

衆院選民主党圧勝!!政権交代へ

失われた3年の始まり 出展:ベリーズ日記:2009年08月

人材不足で大不況に持ちこたえてきた企業には、もう人を育てる余力は無くなったのでしょう。もしくは、この数年間で人を育てる人材さえ育てられなかったというのが実情ではないでしょうか。

ということで、結果的に非正規にも即戦力を求めることになっているのだと思います。いずれにせよ、即戦力が求められるのに、約12年もブランクがあれば、即戦力とは見なされないでしょう。また、12年もの時が流れれば、必要とされるスキルも大分変わっていることでしょうからなおさらです。

新卒でも約4割は非正規

2013年の話になりますが、「新卒雇用4割が非正規で初就職 正規への転職困難」というニュースがありました。

総務省の「就業構造基本調査」をベースにした記事ですが、初めて就職した際に非正規雇用だった人の割合は、2007年10月~2012年9月の間で39.8%だったそうです。

この「就業構造基本調査」は3~5年ペースで行われるので、最新の状況は、残念ながらまだ分かりません。ただ2012年の正社員の有効求人倍率は0.48倍。2015年では0.75倍と大分改善されたので、現在の新卒での非正規率はそんなに高くないとは思います。

ですが、それでもまだ正社員の有効求人倍率は1倍未満なので、新卒で非正規になった人も少なくはないはずです。

職業選択の自由はなし、既に絶望の非正規へのレールが足元に

厚労省の「労働力調査(詳細集計)平成27年(2015年)平均(速報、pdf)」によると、非正規の職員・従業員についた主な理由で最も多いものは、男性が「正規の職員・従業員の仕事がないから」(3万人減少)、女性が「自分の都合のよい時間に働きたいから」(22 万人増加)となっているようなのです。

しかし、男性・女性ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」の高いことが分かります。

同調査の「年齢階級別非正規の職員・従業員の内訳(2015年)」によると、15歳~34歳までの若年層の割合を見ると、男性が32.3%、女性が23.5%と決して低くくないことがわかります。

これらのことからすると、若年層の中には「自分の都合のよい時間に働きたいから」という理由で、非正規雇用を選んだ者もかなり数いることが想像できます。

中年フリーターの予備軍

前述のとおり現在では「非正規雇用でも即戦力主義」が採用されるようになってきました。ですから、若年フリーターも、再就職時に、例えばそれが非正規の仕事であったとしても、前職でのスキルの経験年数や職歴というものが考慮されるようになるのです。

言い換えれば、若いからといって正社員・非正規問わず「未経験OK」という求人はほぼないということです。実際、リーマン・ショック以降は、「未経験OK」という求人は、私も見かけたことはありません。あったとしても、それはほぼブラック企業です

就きたい仕事が見つかっても「未経験OK」ではないのですから、若年フリーターは、今就いている「業界・職種」で永遠に非正規で働くことになるのです。若年フリーターにはもう職業選択の自由はないのです。

今は「自分の都合のよい時間に働きたいから」という利益・ベネフィットが勝っているので、まだ実感はないと思います。しかし、若年フリーターもすでに非正規地獄に片足を突っ込んでいるのです。そうです、彼らは私達中年フリーターと同じ地獄の道を辿るのです。

若年フリーターも生活保護受給者の予備軍

若年フリーターは今は何らかの夢ややりたいことがあって、非正規の道を選んだのかもしれません。

しかし、夢を実現できるのは、ほんの一握りの人でしかありません。残酷な言い方ですが、夢が叶わない確率の方が何千倍も高いのです。「努力は必ず報われる」と教育されてきたかもしれませんが、それは嘘です。世知辛い現実に対する、単なる理想論なのかもしれません。理想と現実は違います。

  • 駕籠(かご)に乗る人担ぐ人
  • 日向の陰では、多くの人が日の目を見ない

確かに努力が報われたごく一部の人間もいます。しかしその背景には、その他大勢の人間(闇)がいるのです。

かくいう私も夢破れた人間の一人。私も人一倍努力しました、それでも夢が実現しませんでした。その経験からしても「努力は必ず報われる」というのを過信してはいけないと助言できるのです。

しかし、その嘘に気づいた頃には、若年ではなく中年になっているはずです。

若年フリーターは中年フリーターの予備軍。中年フリーターは生活保護受給者の予備軍。ですから、若年フリーターも生活保護受給者の予備軍と考えて差し支え無いと言えます。

しかしながら、中年フリーターはまさに生き地獄。こんな地獄に少しでも多くの人が陥らないようになってほしいのです。

しかし、現実は想像以上に厳しいのです。もしあなたが20代後半以降だったら、もう手遅れです。そういう社会構造なので諦めるしかありません。しかし、まだ20代前半なら、なんとかやり直す方法が一つだけあります。

勘の良い方はもうその答えは知っているかも知れません。しかし、今回はここまでとします。若年フリーターが中年フリーターにならない唯一の方法については次回、説明したいと思います。

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