他所(管轄外)の精神障害者雇用トータルサポーターも利用できた話。セカンドオピニオン制を強く推奨

2016年10月、突如うつ病が再燃。そして退職。

発症は2010年。6年間きちんと通院、服薬をしていても急にぶり返す。

「もう、健常者として仕事や生活するのは無理だ…」。そう痛感しました。

障害者として生きる

障害者として生きる。抵抗はありました。悩みました。しかし、最終的には精神障害者保健福祉手帳を取得。そして「障害者雇用」を活用し、正式な障害者として社会復帰をしようとしたのです。

とはいえ障害者枠での就職活動は初の事。何から始めたら良いのかさえ分からず。焦りと不安ばかり。もうそんな状況に居るだけで、抑うつ状態になりそうでした。

耐えきれず、ハローワークへ。これまでの思いの丈を専門相談員に打ち明けてみました。

そこで紹介されたのが「精神障害者雇用トータルサポーター」でした。

精神障害者雇用「ハーフウェイ」サポーター

精神障害雇用に特化した「トータル」サポーター。

私は、紹介された先生のアドバイスを信じ、人生初の障害者雇用に挑みました。

結果は大惨敗。2017年〜2018年の2年間が、全て水の泡に。

もう流す涙さえ枯れ果てていました。

2017年4月。私は彼の指導のもと、まずは職業訓練を受けました。規則正しい生活を身に付けるためにとのことでした。そして職業訓練が終わり、実際に就職活動を始めたのは2017年8月。

しかし8月から9月にかけて、障害者求人はほぼゼロ。求人が無ければ、当然、就職活動はできません。しかも、雇用保険も9月をもって受給終了。万事休す。

私はただ「精神障害者雇用トータルサポーター」を信じ、そして「絶望の底」に叩き落とされたのです。

マネキンカラー
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地元以外、管轄外の精神障害者雇用トータルサポーターも利用可能?

絶望の底に叩きつけられても這い上がる。這い上がるためには、なぜ奈落の底に落ちたのかを知る必要がある。

しかし、地元のハローワークには、私を地獄に突き落とした、精神病質の「精神障害者雇用トータルサポーター」1名しかいない。

そこで私は駄目もとで地元(管轄)のハローワークに、別のハローワークの「精神障害者雇用トータルサポーター」を利用してもいいか聞いてみました。

「良いですよ」と。拍子抜けしました。ただし、向こうのハローワークが受け入れてくるならとのこと。※この辺りの判断はハロワーク毎に違うと思います。確認が必要です。

早速、別のハローワークに相談した所、そちらも受け入れ可能。早速、他所(管轄外)の精神障害者雇用トータルサポーターを利用しました。

そこでなぜ私の就職活動が大惨敗に終わったのかが、明らかになったのです。

ロクイチ(6/1)さえ知らない精神障害者雇用トータルサポーターもいる

今回の失敗にはロクイチ報告」が関係していましたロクイチ報告、ロクイチ(6/1)とは民間企業が毎年6月1日時点での障害者の雇用状況をハローワークに報告することをさします。

ロクイチ(6/1)は障害者枠での就職活動をする人にとって基礎中の基礎、「基本常識」だったのです。

ちなみに6月1日時点で障害者の雇用状況が、法定雇用率(2.2%)を下回っていた場合、企業には以下のようなペナルティが課せられるそうです。

  • 不足した障害者数、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金が徴収(常用労働者100人超の企業)
  • 障害者雇用状況が著しく悪い場合は「雇い入れ計画作成命令」がなされる
  • それでも改善がない場合、特別指導と企業名が公表される

決して軽くないペナルティだと言えます。

障害者採用の山と谷

このペナルティは景気に左右されません。そのため不況になっても対象企業は、法定雇用率を毎年維持しなければならないのです(※努力義務)。

ペナルティ実施の判断基準はあくまでも「6月1日時点での障害者の雇用率」にあります

そのため障害者の採用もやはりロクイチ(6/1)、6月1日に間に合うように行われる傾向があるのです。

このことからすると、障害者採用活動のピークは、やはりロクイチ(6/1)の前までだと断言ができます。

実際、ロクイチ(6/1)を過ぎた7月以降、障害者採用は一気に静まります。特に、8月はお盆休み等で営業日数も少なく、企業の活動が鈍くなりがち。そんな時に、あえて障害者採用を行う所はまずないでしょう。

あってもほぼブラック企業です。障害者雇用でもブラック企業はあります。残念ながら。

障害者採用が活発な時期

またロクイチ(6/1)さえ知っていれば、障害者採用が「活発な時期」を推測することもできます。それは以下の時期です。

  • 3〜5月
  • 10月頃
  • 1月頃

3〜5月はロクイチ(6/1)を見越した採用活動です。

10月頃に再度活発になる理由は、簡単にいえば、欠員補充だそうです。

春(3〜4月)に入社した障害者が、半年程で退職してしまうことが多い事や、障害者雇用は有期契約が多いので、半年後で契約満了になる事が多い事などが、その背景にあるそうです。

1月に活発になる理由は、あまりハッキリしていません。しかし、年明け、年変わりのタイミングで障害者採用の準備、開始するところが多いそうです。

品質の差が激しい精神障害者雇用トータルサポーター

こうした障害者雇用の労働市場、活動方針について、具体的な説明をしてくれたのは管轄外(他所)の精神障害者雇用トータルサポーターでした

彼女はどちらかと言うと、精神障害者のキャリア・コンサルティング、求人マッチングなどの職業紹介、就職サポートに専門性を持っていました。また彼女自身も「私は医療分野は専門外です」と事前に説明してくれました。

他方、私を奈落の底に叩きつけた地元の精神病質な「精神障害者雇用トータルサポーター」は精神科医でした。彼はどちらかというと、精神障害者の「自立を支援」することに専門性を持っていたようでした。

しかし、障害者の労働市場、就職活動の方法については「ド素人」でした

それでも何の根拠もなく、例えば「8月ぐらいから就活しても大丈夫ですよ」などのアドバイスを行っていたのです。それが悪魔のミスリードだったのです。

同じ「精神障害者雇用トータルサポーター」という肩書。それでも、これだけの品質差がある

これが現実なのです。

精神障害者雇用トータルサポーターになるには

ではそもそも、一体どのような人が「精神障害者雇用トータルサポーター」になれるのでしょうか。

  • 精神保健福祉士、又は、臨床心理士の資格を有する
  • 精神障害者の相談経験を有する(内容や年数はハローワーク毎に異なる、つまり曖昧

概ね上記2つの条件を満たす者が「精神障害者雇用トータルサポーター」として活動しているようです。おそらく各ハローワークと有期の契約を結び、報酬を得ているのではないのでしょうか。

精神保健福祉士、臨床心理士それぞれのデメリット

「精神障害者雇用トータルサポーター」になるための条件の中で、一番問題なのは「精神障害者の相談経験を有する」という最重要スキルの定義付けが曖昧な点です。

しかし、それだけなく「精神保健福祉士『又は』臨床心理士の資格」を有するという条件にも、問題があるのではないかと思います。なぜなら、両資格とも「精神障害者雇用トータルサポーター」になることを目的とした資格ではないからです。

そのため「精神障害者雇用トータルサポーター」として活躍するには、どちらの資格とも、それぞれに不足している部分があるのです。

しかし、そうした「短所」、「デメリット」「スキル不足」が見逃されたまま、一人また一人と「精神障害者雇用トータルサポーター」が生み出され、暗躍する

これが現実なのです。

精神保健福祉士の功罪

「精神保健福祉士」は国家資格です。しかし合格率は約60%と比較的高く、決して難関資格ではありません。それだけでなく、受験条件もさほど厳しくはありません。

例えば、上図「同第3号」の場合、「福祉以外の一般大学」を卒業後、「一般養成施設」で1年以上履修すれば受験ができてしまうのです。

「一般養成施設」とはいわゆる「福祉系の専門学校」のことです。ですから、通信制だったり、夜間コースを設けている所もあり、(全く別の)仕事をしながら受験資格を得ることもできるのです。例えばこのまま「同第3号」のコースを辿った場合、「相談援助実務」経験なしで合格することもできるのです。

実務経験、スキルにバラツキあっても合格しやすい。

こうした資格を根拠に「精神障害者雇用トータルサポーター」の肩書を付与する。「精神障害者雇用トータルサポーター」の品質に差が生じるのは当然だと言えます。

精神保健福祉士の利点

しかし、精神保健福祉士の資格取得者を「精神障害者雇用トータルサポーター」に登用することには、メリットもあります

例えば上図の一番右「同第10号」のコースで精神保健福祉士の資格を取得した人は、少なくとも精神障害者の「相談援助実務」が4年以上あることになります。他コースより実務経験が豊富なのです。

そうした人が「精神障害者雇用トータルサポーター」になることは、とても頼もしい事です。

恐らく私が相談した別(他所)の「精神障害者雇用トータルサポーター」は、実務経験を積んでから精神保健福祉士の取得し、「精神障害者雇用トータルサポーター」になったのだと思います。

とにかく安心して相談ができ、データや統計分析に基づき明確な回答を出す。これは肩書だけのアマチュア「精神障害者雇用トータルサポーター」にはできない、ベテラン、エキスパートのなせる業だと思いました。

臨床心理士は不適格

一方「臨床心理士」は民間資格です。しかし精神保健福祉士より専門性は高く、社会の信頼も十分得ていると言えます。

この資格はそもそも受験条件が厳しく、心理学系の「大学」を卒業するだけでなく、指定・専門「大学院」も卒業しないと受験できません。こうしたこともあって、もともと志の高い人が取得している資格という印象があります。

しかし、この資格の趣旨は(主に医療や福祉分野などで)クライアントの心の悩み、問題を軽減し解決することにあります。

決して彼らは雇用・労働問題の専門家ではありません。ですから、いくらカウンセリング・スキルが高くても、肝心な就職の問題が解決できなければ、彼らは「全く役に立っていない」のです

われわれ精神障害者は、現実世界で365日食うに困らないこと、つまり「安定した仕事」に就く事に困っているのです。

心の悩みは本質じゃない。そうじゃない。本当にやりたいのは、職を得る事なのです。だからこそ、我々は公共職業安定所(ハローワーク)に通い続ける。しかし、そこには頼るべき専門家がいないんです

精神障害者の就活自殺、防げるか

もともと「精神」障害者は他の障害者、特に身体障害者と比べ、社会保障、セーフティーネットが手薄。だからこそ「健常者の世界」、俗世での誤解や偏見も解けず、常に就職に難儀する。「うぅー」、血反吐をはき、頭を抱えのたうち回る。

精神障害者の「就活自殺」。

そんな社会問題でも起きないと、我々の悲惨な就職活動、貧困生活にメスは入らないのだろうか。

ちなみに私を絶望の底に叩きつけた、精神科医で精神病質な「精神障害者雇用トータルサポーター」は、恐らく臨床心理士の有資格者だったと思います。

個人的には臨床心理士に「精神障害者雇用トータルサポーター」の肩書を与えるべきではないと思います。

カウンセラーは、アドバイザーやサポーターでありません。彼らはクライアント自身が問題解決の道を見出す事を手助けするのです。

しかし、そんなまどろっこしいのは必要ない。

1秒の余裕さら無い

雇用保険にも期限がある。障害年金ももらえない。時間が無いんです。

精神障害者3級の目の前にある、生活苦、就職問題を解決する具体的なアドバイスが欲しいのです。「具体的」なアドバイスも言えない(そもそも知識がないから)なら、そんな人は要りません。ただ足を引っ張られ、地獄沼に引きずり落とされるだけ。

有象無象の中で生きる

絶望するなというほうが無理かもしれません

ドラマと現実との「ボーダーライン」はすでに存在しない。仕事も金もなく空腹に耐える精神障害者3級。そこにあるのは絶望だけ。

このドラマと同じ悲惨な求職活動の中で、仮に「精神障害者雇用トータルサポーター」を利用するならば、私は以下の事に気をつけて頂きたいのです。

  • 精神障害者雇用トータルサポーターには当たりハズレがある
  • むしろ頼れる人物の方が少ない
  • だからこそセカンドオピニオン制を推奨

こうでもしないと、肩書だけの有象無象に足元をすくわれる。

これが現実なのです。

完全かつ検証可能で、不可逆的な国家資格化 (Authorization) CVIA


「精神障害者雇用トータルサポーター」は「資格」ではない
。「免許」でもない。単なる「肩書」に過ぎない。そこに全ての原因がある

試験もない。なるための条件も曖昧。しかもそれが各ハローワークによってまちまち。

制度を見直してほしい。「精神障害者雇用トータルサポーター」を国家資格、厳格な免許制にしてほしい。容易ではないことはわかる。でもそうでもしなければ、真に頼れる「精神障害者雇用トータルサポーター」は生まれない。

CVIDより長い道のりになるかもしれない。でも、今のような中途半端な状態で一番苦しんでいるのが誰なのかを考えてほしい。それは本来サポートの対象となるべき精神障害者(3級)なのです。

届かぬ想い

分かっている。いくら叫んでも永田町には届かない。実現はしない。所詮少数派(マイノリティー)の願いだから。いくら叫んでも数で負けてしまう。高齢者、子育て世帯、彼らの咆哮(エゴ)にかき消されてしまう。

数という「ボーダーライン」

絶望するなというほうが無理かもしれません。

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