ChaletOS(Ubuntu派生)に移行するにあたって、最も心配だったことがあります。それはfoobar2000がちゃんとWineで動くかどうかです。
なぜならUbuntuの主要な音楽プレーヤーは、以下の3つである事を事前に調べていたからです。
- Rhythmbox
- Banshee
- Audacious(ChaletOSに標準インストール)
これらはfoobar2000に比べ明らかに機能、カスタマイズのしやすさの両面でかなり劣っています。
そして何よりアルバムの管理機能、ライブラリ管理機能が非常に不便で拙劣です。1,200枚を超えるアルバムを集めてきた筆者にとって、これは致命的なウィークポイントです。ですから何としてもfoobar2000にはChaletOS上で動作してほしかったのです。
foobar2000はWineで問題なく動く
しかしそれは取り越し苦労でした。foobar2000は全く非の打ち所がないほど完璧に動作します。ということでChaletOSでのお勧めの音楽プレーヤーは「foobar2000」で決定です。
ちなみに使用しているWineのバージョンは「2.0(staging)」、64bit環境です。
結論がすぐ出てしまったので余談。上記画像のVakenecoの「Phantasmagoria」というアルバム、結構お勧めです。公式チャンネルにサンプル動画(ライブ音源)が有ったので良かったらご視聴下さい。
絶対にやってはいけないこと
さて、驚くほど完璧に動作するfoobar2000ですが、1つだけ絶対にやってはいけない事があります。
それはインストール終了後、Windowsでの設定フォルダー、つまり「C:\Users\(ユーザー名)\AppData\Roaming\foobar2000」を、Wineの仮想Cドライブにそのままコピーすることです。
Windows→Windows間の移行であれば、それで問題がないのですが、OSをまたいでそれをやると、鑑賞に耐え難いほど音(出力)が狂います。ノイズも酷い、テンポもボリュームも完全にバラバラ。原音が再生不能。
つまり、foobar2000が壊れるのです。
正しい移行方法
こうした悲劇を防ぐ方法は1つしかありません。
それは、正常に動作しているWindowsのfoobar2000の設定情報(Preferences)と見比べながら、1つ1つ手作業でChaletsOSの方のfoobar2000の設定をすることです。

どうカスタマイズしたかのメモや記録がある方は、それを見ながらセッティングするのも良いでしょう。
時間がかかると思うかもしれませんが、意外とそうでもありません。
ただしスキンなどを徹底的にカスタマイズしている方は、それなりに時間がかかると思います。しかし、今のところ、これしか方法はないと思います。
foobar2000は2020年以降どうなっているのか
Wineでfoobar2000が完璧に動作する。しかしこれで一件落着とはいかないと思います。
なぜならfoobar2000に限らずWindowsプログラムの将来には不透明性があるからです。その原因は以下の2つです。
- Windows7の延長サポートが2020年1月14日で終了
- Windowsストアアプリ以外のインストールを禁止する機能が搭載予定
1つ目は周知のとおりです。これを境にゴミ以下のWindows10がOSのシェアを独占することになるでしょう。
そこに例の迷惑機能。
次期Windows 10に、ストア以外から入手したアプリを「禁止する」新機能 ~既存のWin32アプリに大きな影響 – PC Watch
この迷惑機能がどの程度「悪質」かによって状況は変わるとは思います。しかし、2020年1月15日以降は、ほぼ全人類がWindows10を強制的に使わせられる苦。その上既存のプログラム(exeファイル)も閉め出される。
そうなったら誰だって既存プログラムの開発をやめ、Windowsストアアプリの開発に専念するでしょう。その時LinuxユーザーにとってWineはどんな存在になるのでしょうか?
そう考えるとやはりChaletOSユーザーも、foobar2000の代替プログラムは探しておく必要があると思います。
候補は1つだと思っていた
Linuxを代表する音楽プレーヤーは以下の3つ。
- Rhythmbox
- Banshee
- Audacious(ChaletOSに標準インストール)
しかし中でも特に「Audacious」はライブラリ管理機能が貧弱で到底使えたものではないと感じました。それ以外も同様です。

その他に「Clementine」をお勧めするユーザーも多くいます。しかし「Clementine」のライブラリ管理機能も、あまり使いやすくありませんでした。そのためすぐに候補外へ。

その他には「Lollypop」をパワープッシュする方もなぜか多いです。しかし、これでどうやって1,000を超えるアルバムを管理できるのでしょうか?
たぶんできても数百枚、せいぜい400~500未満のアルバムしか管理しきれないと思います。ということで「Lollypop」はインストールさえしていません。

動作しない本命
結局以上に挙げた音楽プレーヤーで、実用的なライブラリ機能を持つものはありませんでした。
しかし、そんなことは想定の範囲内、他に本命の代替音楽プレーヤーの目星を付けていました。それが「Nightingale」です。音楽プレーヤーとしてはそこそこ知名度があるはずですが、なぜかあまり取り上げられない音楽プレーヤーです。
ちなみにWindows版(32bit)もあります。

公式版が動作しない
実はこの「Nightingale」、私の環境では全然動作しませんでした。多分これは私の環境だけでないはずです。なぜなら公式サイトからダウンロードできるバージョン(1.12.1)は2014年1月14日にリリースされたものです。

古すぎます。これではモダンな環境で動作しなくても何の不思議もありません。
私の場合はインストールは何とかできたのですが、音楽ファイル(ライブラリ)のインポートがどうしてもできませんでした。インポートに失敗というより無反応という感じです。

結果、何の再生も出来なかったのです。
PPAからのインストールには成功
公式版が動作しない場合は、PPA(パーソナル・パッケージ・アーカイブ)からインストールするという選択肢もあります。PPAとは「非公式」のレポジトリの事です。
「非公式」ですから動作保証や安全性の保証はありません。自己責任でインストールする事になります。ちなみにインストールコマンドは以下のとおりです。
sudo add-apt-repository ppa:nightingaleteam/nightingale-nightly
sudo apt-get update
suto apt-ge install nightingale
インストールするどうかは、以降の説明もご覧頂いてからご判断下さい。やはりまだ完璧ではありませんので。
やっと鳴いてくれたNightingale
こうしてインストールした「Nightingale」(ver1.13a)、公式サイトから入手する「Linux Tarball」(ver1.12.1)と違い、メニューは全部英語表記です。しかし、曲名などはちゃんと日本語で表示できます。
紆余曲折はありましたが、やっと「Nightingale」がChaletOS16.04.2で鳴いてくれたのです。※Nightingaleは「サヨナキドリ」という意味らしいです。
やっと使いやすいライブラリ管理機能を持つ音楽プレーヤーが動くようになりました。
既存アドオンとの互換性が低い
正常に動作するようになってすぐに色々設定をしてみました。最初に面白いなと思ったのは「Feather」機能です。とても簡単に「見た目」が変えられることです。
これは「Chrome」という「Feather」を使った場合です。良い意味で「Ubuntu感」がゼロです。ただこの「Chrome」を使うと若干不安定になります。
またこのPPAからインストールした「Nightingale」(ver1.13a)は、既存のアドオンとの互換性がいまいちです。人気の「MediaFlow」や「WhirlyBird」なども使えませんでした。「directory browser」にも興味がありましたが使えませんでした。
これらが使えれば、印象はかなり違ったかもしれません。「Nightingale」はアドオンがあって初めてカスタマイズができるタイプの音楽プレーヤー。
とは言えそれでも今まで挙げてきたLinuxの音楽プレーヤーの中では最も高機能だとは思いました。
しかしアドオン対応が不十分なので、現時点ではまだ「ビミョー」なソフトです。やはり公式版とアドオンが正式にバージョンアップをするを気長に待った方が良いのかもしれません。

最強の伏兵 Guayadeque Music Player
foobar2000の代替音楽プレーヤーとして「Nightingale」を本命としていましたが、公式版がずっとバージョンアップしていなかったので、別の高機能音楽プレーヤーにも目星をつけていました。
それが「Guayadeque Music Player」です。
この音楽プレーヤーが優れている点は以下の点です。
- ドラッグ・アンド・ドロップで柔軟にレイアウトが変更可能
- ライブラリ管理機能が秀逸
- アルバム一覧にサムネイルが表示される
- グリッド表示にも対応
- インクリメンタルサーチにも対応
その上大きな欠点もありません。なぜ誰にも紹介されて来なかったのかが不思議なぐらいです。現時点では「Nightingale」よりも「Guayadeque Music Player」の方が1枚も2枚も上手です。
ドラッグ・アンド・ドロップでレイアウト変更
foobar2000を使うにあたって最初に立ちはだかる壁が、レイアウトのカスタマイズの壁だと思います。foobar2000ではGUIでのレイアウトのカスタマイズはできません。ただし、その分キメの細かいカスタマイズができます。

一方、「Guayadeque Music Player」は何とドラッグ・アンド・ドロップ、つまりGUIでレイアウトが非常にフレキシブルに変更が出来ます。
初期状態は以上のような感じです。各パネルをドラッグ・アンド・ドロップする、パズルを組み立てる感覚で自分の好きなようにカスタマイズできます。簡単に。
割愛しますが、カスタマイズしたレイアウトを保存する機能も付いています。
これからのスクリーンショットには、ほとんどEmaさんのアルバムが掲載されています。別にEmaさんを推しているのではありません。日本語の曲名が多いアルバムが他に思い付かなかっただけです。
【見て頂きたいポイント】
見ていただきたいのは、Emaさんの写真ではなく、その上プレイリストの日本語の曲名が正しく表示されているところです。
直感的で管理しやすいライブラリ
以上が私がカスタマイズしたレイアウトです。レイアウトのセンスは置いておいて、何か他のソフトより「直感的で分かりやすい」感じがしませんか。
この機能にはやられました。これはfoobar2000にも「Nightingale」にもない個性的な機能だと思います(foobar2000なら出来るかもしれません)。確かにこの機能があれば、ライブラリの管理は格段にしやすくなります。
ライブラリ管理機能については、最強の部類ではないでしょうか。
使いやすいグリッド表示
以前「Lollypop」のようにカバーアート、ビジュアル優先でライブラリを管理をするには限界があると指摘しました。しかし「Guayadeque Music Player」はビジュアルの分かりやすさとライブラリ管理のしやすさを見事に共存させています。
「Lollypop」のようなフルスクリーンでのカバーアート表示ではありませんが、「アルバム・ブラウザ」というボタンをクリックすると「Guayadeque Music Player」もカバーアートのグリッド表示が出来ます。
「Guayadeque Music Player」のグリッド表示の優れた所は、単にビジュアルだけでアルバムを検索するのではなく、検索ボックスも併用して簡単にアルバムが管理が出来ることです。
今回の例では検索ボックスに「red」と入力するだけで「Red Garland」のアルバムだけを抽出できました。やはり視覚的な表示だと直感的で分かりやすいです。
しかし、今回のように該当のアルバム数が多い場合、1ページでは収まりきらない事もあります。
とはいえアーティストが生涯に発表できるアルバム数は、多くても30枚台ではないかと思います。ですから大体は2ページ程度で収まります。2ページ分のスクロールは全然苦ではないです。

ですから「Guayadeque Music Player」のグリッド表示はとても使いやすく、分かりやすいのです。
「Nightingale(ver1.13a)」もアドオンを導入することでグリッド表示が出来ます。しかし検索ボックスとは連動していません(執筆時点)。

ハッキリ言って使いづらいです。
地味に便利なインクリメンタルサーチ
最後にご紹介するのは「インクリメンタルサーチ機能」です。これは以下のGIFアニメを(できれば拡大して)見ていただくと分かりやすいと思います。
今回私は検索ボックスではなく「アルバム・アーティスト」欄で「red」と直にタイプしました。そうしたら自動でアーティスト「Red Garland」の所にジャンプし、「Red Garland」のアルバムだけが抽出されました。
つまり、このインクリメンタルサーチ機能のお陰で、いちいち検索ボックスで文字を入力しなくても素早くアルバムの抽出・管理が出来るのです。
この機能はfoobar2000にも付いています。一応「Nightingale」もグリッド表示の時以外はインクリメンタルサーチが出来ます。
いずれにせよ地味な機能ですが、あるとないとでは使い勝手がかなり違います。
動的再生リストの充実を
このように機能もUIも充実した「Guayadeque Music Player」ですが、読み方がさっぱり分からないという欠点の他に、もう1つ改善して欲しい点があります。
それは「動的再生リスト(Dynamic playlists)」についてです。foobar2000でいうところの「Quicksearch」あるいは「Album List」の「Filter」のようなものです。つまり条件にマッチする曲だけをピックアップし再生する機能です。

foobar2000ではかなり高度で緻密な条件設定ができます。しかし、それに比べれば「動的再生リスト」は明らかに雑です。
困ったことに公式マニュアルでの具体的な解説例もたったの3つ。

これでどうやって条件を作れば良いんでしょうか?ここが「Guayadeque Music Player」の唯一の欠点だと思います。私はただ単に「アルバムごと」にシャッフル再生をしたいだけなのです。
「アルバムごと」に再生する機能は冒頭で否定してきた音楽プレーヤーのほとんどに、標準で搭載されていました。皮肉なものです。
この辺りは今後の開発に期待するしかありません。
評価タグ問題(Rating Tag Issue)
以上を踏まえると、結局ChaletOSでの一番お勧めの音楽プレーヤーはfoobar2000になります。「Guayadeque Music Player」も悪くはないですが、先述の「動的プレイリスト」の貧弱さがネックになってしまいました。
ただもう1つfoobar2000から別の音楽プレーヤーに乗り換えたくなかった理由があります。それは評価タグ(Rating Tag)がプレーヤー間でバラバラなことです。
音楽プレーヤーを変えると高確率で今までの「評価」、「Rating」のタグ情報は引き継げなくなります。これがあるからどうしてもChaletOSでもfoobar2000が「正常に」動いてほしかったのです。
これは本当にどうにかしてほしいです。
絶対UTF-16で書き込みを
今回foobar2000、Clementine、Nightingale、「Guayadeque Music Player」、計4つの音楽プレーヤーのスクリーンショットを掲載してきました。
実はこれらでは、あえてVakeneco、松永貴志、Emaなど、日本人のアルバム、中でも曲名が日本語の物を敢えてピックアップました。それにはちゃんとした意図があります。
それは、Windowsで作成した音楽データも、ちゃんとした文字コードでタグ付けをしていれば、Linuxでも全然文字化けしないことを例示したかったのです。
そのLinuxでも文字化けしない文字コードとは「UTF-16」(ユニコード)です。
Windowsのリッピングソフトの代表格「Exact Audio Copy」の「エンコードオプション」にもちゃんと「UTF-16」で書き込むためのチェック欄があります。
同様に「Mp3tag」のオプションにも書き込む文字コードの設定欄があります。
これら両方とも「UTF-16」の設定にしていなければ、ChaletOSに移行しても、かなり盛大に文字化けすると思います。ですから、これまで「UTF-16」でのタグ付けをしていなかった方は、何らかの手段でタグを「UTF-16」で書き直し、上書きする必要があると思います。調べていませんが、その辺りを一括処理するツールはあると思います。
インストール出来なかった場合
最後に「Guayadeque Music Player」について気になった事があったので補足します。
筆者が最初にこのソフトをインストールしたのは2017年の1~2月頃だっと思います。その時は「Application Center」から普通にインストールできました。
しかし7月に入り、別環境で「Application Center」からインストールしようとしました。しかし、できませんでした(※スクリーンショット撮り忘れ)。
偶然だったかも知れません。しかし何らかのトラブルで「Application Center」からインストールができないことも考えられます。その場合は以下のコマンドでインストールをして下さい。
sudo add-apt-repository ppa:anonbeat/guayadeque
sudo apt-get update
sudo apt-get install guayadeque
このPPAは公式サイトからリンクされているものです。また開発者自身が「Application Center(=Ubuntuソフトウェアセンター)」からのインストールを非推奨(Not recommended!)と指摘しています。
であれば、最初から上記コマンドでインストールしても良いのかもしれません。
もう1つソースからビルドという方法もありますが上級者向けです。割愛。