Windows→Linuxへ移行する際、多くの方が自分に合ったテキストエディターを探すのに大変な苦労をしています。その背景、理由としてはLinuxの独特な特性、文化が挙げられると思います。
- (プログラマー向け)ソースコードエディターの方が多い
- Vim、Emacsのような敷居の高いエディター(キーボード操作型)が浸透している
- 日本語入力に欠陥があるものもある
こうしたマニアックさと不便さに嫌気がさし、早々にLinuxへの移行を諦めた方も多いと思います。
まさに「テキストエディターの壁」です。
こうした厳しい状況下で、私が選んだのは「Geany」。しかし「Geany」にも「日本語入力」に多少難がありました。今回はその不具合を解決する方法について説明をします。※少しだけ難しい方法です。
秀丸の代替ソフトを求めて
ちなみに私はWindowsでは「秀丸」を使っていました。そのためChaletOSでも「秀丸」並に軽くて、ほとんどの言語に対応するマルチで高機能な「汎用テキストエディター」を探していました。
また私は「LaTeX使い」でもあります。ワープロソフトは一切使いません。ですからそれなりに長いソースコードも書きます。
それらを考慮すると少なくとも以下の5つを満たすテキストエディターが必要でした。
- 軽い、サクサク動く(当たり前)
- 長文が入力しやすく管理しやすい
- 可読性が高い
- LaTeX(Tex Live)に対応している、なおかつコンパイル等がしやすい
- (全言語に対し)シンタックスハイライト機能がある
Atomは可読性が低い
そこでまずは巷で大フィーバーの「Atom」を使ってみました。しかし、重過ぎてササッと文章を書くに向いていませんでした。設定も独特で難解。また「LaTeX」のソースコードや長文を書くのにも向いていません。
なぜならいくら目に優しいとは言え、インターフェイスが度を越して真っ暗だからです。そしてコントラストも低く文字が見づらいからです。つまり「可読性」が悪いのです。
「ChaletOSにWindows7アイコンを導入する方法」で説明したとおり、無彩色(黒)の背景には、彩度の高い(より鮮やかな)色を使うのが鉄則です。
ご覧の通り「Atom」はあまりこの原則には則っていません。そのため全体的にボヤケた印象になっています。全部読みづらいですが、特に日本語が酷いです。
コマンド(半角英数)もあるが、それ以外はほとんど日本語。これが「LaTeX」ソースコードの特徴。それなのに肝心の日本語が読みにくい。これは地獄です。
当然こうしたハッキリとしない「可読性」の中では、長文、コード、あるいはただ単に文字を読むだけで疲れ切ってしまいます。
そのため速攻でアンインストールしました。なぜ大人気なのか正直分かりません。
Sublime Textは日本語が入力出来ない
その次に試したのが「Sublime Text」でした。「Sublime Text」は本当に優れたテキストエディターでした。
一目瞭然「Atom」に比べ、クッキリ、ハッキリとして見やすいです。背景は同じくほぼ黒色(ほぼ無彩色)ですが、「Sublime Text」の方が彩度の高い色を使っています。また文字も「Atom」のようにグレーではなく白を使っています。黒と白の方が明度比、明るさのコントラストがはっきりしているので、「可読性」が高くなるのです。
また「LaTeX」にもとても良く対応していました。優秀でした。
対処方法はありました。しかし、その対処を施しても、日本語を入力するのは一苦労でした。なぜなら標準の「Fcitx + mozc」ではなく「emacs-mozc」を使うからです。個人的に「emacs-mozc」は独特で全く馴染めなかったです。
■対処方法の参考
LinuxでのSublimeTextの日本語入力 - Qiita
ちなみに「Sublime Text」は有償ソフトですが、「ライセンス購入しますか」という警告がたまに出るだけです。制限はそれだけだったはず。
GeditはLaTeXプラグインが「ソレダメ!」
上述の2ソフトを除くと残る候補は以下の2つになります。
- Gedit
- Geany
そこでまず利用したのが「Gedit」。しかし「Gedit」を使った感想は「優秀だが全てにおいて70~80点」。
- テキストエディターとしては若干起動が遅い
- 「LaTeX Plugin」の挙動がとても不安定
- 「SyncTex」プラグインも多少不安定(※環境によるかも)
以上のような不満があったので、「Gedit」は候補から外れました。特に「LaTeX」関連のプラグインが安定しない、使えたとしても(個人的には)使い勝手が悪いという点は「LaTeX使い」にとって致命傷でした。
ただし「LaTeX」を使わない方には「Gedit」は「普通に」使いやすいと思います。
ちなみに「Gedit」は「Application Center」からインストールできます。通常通り右上の検索欄に「gedit」と入力します。
「Text Editor」と表示されているものが「Gedit」です。「Text Editor」の「詳細情報」をクリックします。
「詳細情報」の画面、左下「Set of plugins for gedit」に必ずチェックを入れてから、「インストール」をクリックして下さい。いつも通りパスワードを入力すれば、インストールが始まります。
Geanyの日本語入力の不具合
「Gedit」が候補外になったため、最後の候補「Geany」を試しました。※正しくはテキストエディターではなくIDE(統合開発環境)だそうです。
「Geany」も「Application Center」からインストールできます。いつも通り右上の検索欄に「Geany」と入力し検索します。
検索結果の「詳細情報」をクリックします。
やはり必ず左下の「Set of pliugins for Geany」にチェックを入れて、「インストール」をクリックして下さい。パスワードを入力し、インストールを開始して下さい。
ちなみに以下のコマンドで「Geany」本体とプラグインの2つを同時にインストールすることができます。
sudo apt-get install geany geany-plugins
もちろん、パスワードは求められます。
日本語のフォントサイズが反映されない
「Geany」を使ってみて、最初に感じたのは「速い、サクサク動く。そして高機能」ということです。汎用テキストエディターとはこうあるべきとも思いました。
やっぱり重いテキストエディターなんて話にならないですよ。その上機能面も予想以上。すぐ「Geany」を相棒をすることにしました。
変換確定前の文字が小さい
私は「Geany」のエディタ、実際に文字を入力する部分のフォントを「Monospace 13ポイント」で設定していました。
しかし「Geany」で日本語の文章を打ってみると以下の状態になります。
「あれ、おかしい」。そうです。変換確定前の文字が異常に小さいのです。
しかし変換を確定すると正しく「Monospace 13ポイント」で表示されます。困りました。
しかも半角英数の方は、ちゃんと常に13ポイントで入力、表示ができます。つまり日本語入力だけがおかしかったのです。
デフォルトのフォントサイズが関係
上記の不具合は「外観」の「デフォルトフォント」と関係がありました。「デフォルトフォント」の確認方法ですが、まず「設定マネージャー」を開きます。
その中から「外観」を開きます。
外観の画面に切り替わりますので、「フォント(F)」タブを開きます。筆者の環境では「Noto Sans 10ポイント」となっていました。これを試しに「Monospace 13ポイント」に変更してみました。
その結果、「Geany」でも問題なく、変換確定前の文字と確定後の文字のフォントサイズが一致しました。
しかし、これではエディタ内の文字だけでなく、メニューバーや、ボトムパネルのタブの文字も【巨大化】してしまいます。当然、他のソフトの文字も【巨大化】します。
もっと恐ろしいことに、システム自体の文字も全て「13ポイント」になってしまうのです。もうグチャグチャです。

出典:映画の心理プロファイル
Geanyだけの不具合
こうした不具合は「Geany」だけに起こる現象でした。もっと言えば恐らく「ChaletOS」あるいは「Xfce」を採用しているOSだけで起こっているんではないかと思います。
「Geany」の日本語入力に不具合があるなんて話は、他のディストリビューションでは聞いたことがありませんので。
また、今まで試したきた「Atom」、「Sublime Text」、「Gedit」では、いずれも日本語入力に何の不具合もありませんでした(※「Sublime Text」は日本語入力できるよう対策をした上で)。正常な日本語入力の例として「Gedit」の日本語入力を掲載します。
変換候補が別の場所に表示される
「Geany」の日本語入力問題は、実はこれだけではありません。もう1つあります。敏感な方はもう気づいていたかもしれませんが、「Geany」では入力中の変換候補が画面の左下側に表示されてしまいます。要するに「インライン変換」ができないのです。
この不具合は「Fcitx」をいじれば直ると楽観視してましたが、どうやってもダメでした。
しかしこれら2つの問題を両方とも一気に解決する方法があります。それは「GitHub - chu-hai/preedit_tweak: GeanyのPreeditの設定を変更し、インライン変換を可能にするためのプラグイン」、つまり「Preedit Tweak」を利用する方法です。
ちなみにこのプラグイン、2017年の5月に公表されたばかりのプラグインです。
余談ですが、このプラグイン登場の前は、別の方法で、変換確定前と確定後の文字サイズを合わせていました。それでも変換候補の位置は直せませんでした。
ですから、このプラグインを利用するのが唯一の打開策だと言えます。
ビルドが必要
GitHub - chu-hai/preedit_tweak: GeanyのPreeditの設定を変更し、インライン変換を可能にするためのプラグインを訪れてみて、気づいたかもしれませんが、このサイトではプラグイン本体は配布していません。
「ソースファイル」のみ配布しているのです。つまり「ソースからビルドしないと利用できない」プラグインなのです。ビルドやコンパイルの作業は、本当は上級者向けの作業です。
ただし今回ビルドするのは、プラグインのみと比較的単純だったので、Linux初心者の私でもビルドが出来ました。ですから安心して下さい。そんなに難しい作業ではありません。
それとビルドの利用頻度は極端に少ないです。今回以外ほぼゼロかも知れません。ですからあまりビルドの意味やそのコマンドを覚える必要は全くありません。
足りないプラグラム、ツール
ソースからビルドやコンパイルをする際、プログラムやツールに不足があり、順調には進まない事が非常に多いと思います。
今回の「Preedit Tweak」についても、追加インストールが必要なものがありました(あくまでChaletOSでの話)。それが以下の3つです。
- Cmake
- pkg-config
- libgtk2.0-dev
しかし幸か不幸か、これら3つとも「Application Center」からもインストール出来ます。ただし全てを「Application Center」からインストールするのはとても手間だと思います。
しかしコマンドであれば、複数のプラグラムを【一括で】インストールすることが出来ます。ぜひ以下のコマンドをご利用下さい。端末は「Ctrl+Alt+T」で立ち上がります。
sudo apt-get install cmake pkg-config libgtk2.0-dev
途中[Y/N]の質問がされますが、キーボードで「y」を入力し「Enter」を押して下さい。
あっけないほどすぐインストールが完了します。インストールが完了しましたら「exit」と入力するか、そのまま右上の「X」で端末は閉じて下さい。
ソースをダウンロード
さて以上で下準備「は」完了です。実際に「Preedit Tweak」プラグインをビルドするには、まずはソースファイルをダウンロードする必要があります。ですからもう一度GitHub - chu-hai/preedit_tweak: GeanyのPreeditの設定を変更し、インライン変換を可能にするためのプラグインを訪れます。
サイトの右上に緑の「Clone or Download」というボタンがありますので、押下します。ドロップダウンが表示されますので、青色の「Download ZIP」をクリックし、圧縮ファイルをダウンロードします。
ソースを展開
そうすると「~/Downloads/」に「preedit_tweak-master.zip」が保存されたと思います。※「~」はホームディレクトリのこと。
別にどこに圧縮ファイルを展開しても、ビルドはできるのですがやはり難しい作業です。ですからこれからの作業は私が行った手順をそのまま踏んで頂くと間違いはないと思います。※上級者の方はお好きな方法で。
まず「preedit_tweak-master.zip」の上で右クリックをし「ここで展開(H)」または「unar」で展開をします。※「unar」での展開方法は以前の記事をご参照。
「~/Downloads/」に「preedit_tweak-master」というフォルダーが出来たと思います。そのフォルダーをダブルクリックして開きます。「preedit_tweak-master」フォルダーを開くと以下の状態になると思います。
このフォルダーの余白部分で右クリックをします。メニューの中から「Open Terminal Here」を選択します。
ビルド用フォルダーの作成
今回のビルドで使用するプラグラム「Cmake」は、ソースフォルダー、つまり今開いている「preedit_tweak-master」フォルダーの中にサブフォルダーを作ってそこで、ビルドすることを推奨しているようです。ですので以下のコマンドを入力し、ビルド用のフォルダーを作成します。
mkdir build
※ちなみに「build」部分はお好きな名前でも結構です。
実際「Thunar(ファイルマネージャー)」でも「preedit_tweak-master」フォルダーの中に「build」が出来たことが分かります。
続けて以下のコマンドを入力し、「build」フォルダーに移動します。
cd build
必ず上図の状態になったことを確認して下さい。
ビルドの手順
では実際に「Preedit Tweak」をビルドする方法、コマンドを説明します。その前に再確認ですが、前掲の図のようになっていること、つまりカレンドディレクトリが「~/Downloads/preedit_tweak-master/build$」になっていることを再確認をして下さい。
確認が終わりましたら、続けて下のコマンドを入力して下さい。
ちなみに以下のコマンドの「..」は「build」の1つ上のフォルダー、つまりソースフォルダー「preedit_tweak-master」のことを指しています。
cmake .. -DCMAKE_INSTALL_PREFIX=/usr
上記コマンドでの処理が終わりましたら、続いて以下のコマンドを入力します。
make
上記作業が終わりましたら、最後に以下のコマンドを入力し「Preedit Tweak」プラグインをインストールします。
sudo make install
すぐにパスワードが求められますので、ご入力下さい。
インストールはあっという間に完了します。これで「Preedit Tweak」のビルドとインストールが完了しました。今回のビルドはかなり簡単だと思います。※個人の感想です。
「Preedit Tweak」を有効にする
それでは先程インストールした「Preedit Tweak」を実際に有効にしてみましょう。まずは「Geany」を起動します。「Whisker Menu」からでしたら、「開発」カテゴリーにあります。
開きましたら、メニューバーの中から「ツール(T)」を選択。その中から「プラグインマネージャ(P)」をクリックします。
「プラグイン」という画面が開きますので、画面を真ん中ぐらいまでスクロールすると「Preedit Tweak」という項目がありますので、左側の欄にチェックを入れます。
チェックを入れた状態で、枠外下の「設定(P)」をクリックします。「プラグインを設定」画面になります。
一番上の「インライン変換を有効にする」に必ずチェックを入れてから「OK(O)」をクリックし閉じます。以上です。
日本語入力の不具合が全て解決
それでは最後に「Preedit Tweak」導入後の日本語入力の状態を確認します。実際に文字を打ってみます。
一目瞭然、「Geany」が抱えていた2つの日本語入力問題が両方解決していることが分かります。
- 変換確定前の文字が小さい
- 変換候補が画面下部に離れて表示される
ちなみに先程の文章を変換確定したのが下の図です。当然ですがこちらも何の問題もありません。
一挙両得とはまさしくこのことでしょう。「Preedit Tweak」プラグインの作者Chuhai様には心から感謝申し上げます。
これで「Geany」は、欠陥が無い最強のテキストエディターになったと言えます。
「テキストエディターの壁」に直面し、泣く泣くWindows10を使ってらっしゃる方、Linuxにも「Geany」という使いやすいテキストエディターがありますよ。ゴミ以下のWindows10なんか床に叩き付けて、ChaletOSでM$フリーな生活を送ってみませんか?