本研究では、あるべき「人間像」、「人間的であること」の定義を限定しません。そのため、ヒトの実態に則した住宅考ができるのです。
他の住宅論にはこうした柔軟性がありません。例えば、バウビオロギー*1)における「人間的」とは、「心身に害を及ぼさないこと」、「都市化、工業化、文明化による弊害を免れること」に等しいように思えます。
∂*1)建築生態学。健康や環境に配慮した「人間的」な空間を目指す思想。
それでは、心身及び環境に無害な建築は、本当に「人間的」と言えるのでしょうか?
そうではないはずです。なぜなら、建て主の要望は多種多様だからです。
- 良い音を楽しみたい
- 暖かくて快適な家に住みたい
- 健康的で緑豊かな環境にも住みたいが、近代化、都市化の恩恵も受けたい
- 風土にマッチしない様式への憧れ
- 利便性を最重視した住居選択…etc
健康的な環境を用意すれば、人間的な暮らしができるとするのは、安易な発想なのです。ただ単に、都市化、工業化、文明化の弊害を受けた環境が人間的でないだけなのです(図4)。
図 4. 前件否定の錯誤
命題が「真」であっても、それだけでは裏命題が「真」だとは断言できません。
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